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マネジメントへの挑戦【経営のヒント 231】

「モデルはGMだった」。
『マネジメント―課題、責任、実践―』、第3章は「マネジメントへの挑戦」に記された
ドラッカー博士の言葉です。そして今週、そのGMが経営破綻しました。

<ドラッカーの一言>
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昨日のモデルは、日を追ってモデルとなりえなくなっている。
しかもわれわれは、いまのところ新しいモデルを手にしていない。
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『マネジメント』p.30 1973年 ダイヤモンド社より

かつてドラッカー博士は、企業の理想的なモデルは二つしかないと述べたことがあります。その一つがGMの連邦分権制でした。
しかし、それはマニュアル・ワーカー(肉体労働者と訳されている)を中心とした単一製品ラインのメーカーという狭い分野の理想モデルでした。
それはまた、国内市場を前提としたモデルでもありました。
今回の出来事は、史上最大のメーカー破綻ということだけではありません。
それは一時代の終焉を象徴する出来事です。
つまり先進国においては、マニュアル・ワーカー中心の企業の生存可能性が急激に下がっていることを意味しています。
現にハマーという車種は、欧米のメーカーではなく中国のメーカーが取得するといいます。IBMがパソコン事業を中国の企業に売却したのと同じ流れです。
いまや先進国は、ナレッジ・ワーカー(知識労働者)を中心的存在とした企業からなる社会です。マニュアル・ワーカーが中心であった時代は、有形固定資産を従業員数で割った<労働装備率>という指標が重要でした。
例えば、工場のロボット化が生産性の向上に大きく寄与しました。
しかしいまや時代は変わり、知識の装備率が企業の安定と成長に大きな影響を与えています。
時代を象徴する出来事であるという意味は、まだあります。
巨大工場で少品種のものを大量に作り出すモデルは、資本が大きな意味を持ちます。
先ほどの<労働装備率>は、資本(=お金)の装備率と言い換えることも出来ます。
しかしこれからの時代は知識がより重要です。
知識が重要という意味は、それを保持する人間が重要だということに他なりません。
金融資本主義から知識・人間資本主義の時代にシフトしたということです。
これら一連の動きは、すでにドラッカーが60年代に示していたことです。
ドラッカーは予兆や始まりを感じる天才的な能力を持っていました。
私たちは、いま目の前でその予兆が本流となり河口に出るところを見ているに過ぎません。
予兆は現実となり、一つの時代終焉を告げているのです。
次の幕は、もう開いています。しかし本番はこれからです。
意識を黒から白に切り替えるぐらいの心構えが必要なのかもしれません。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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