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仕事と働くことと働く人たち【経営のヒント 262】

今日は16章「仕事と働くことと働く人たち」からお伝えします。
15章から23章までのテーマは、「仕事を生産的なものにし、人に成果をあげさせる」ですが、今日の一言は、ずばりそのことについてのものです。

<ドラッカーの一言>
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働く者が生産的な存在になるためには、
成果をあげられなければならない。
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『マネジメント』p.233 1973年 ダイヤモンド社より(1字改変)

仕事を生産的にするのは、「人」です。そして「生産的な存在」となるためには、「成果」をあげることが不可欠です。しかし、仕事の成果をあげるためには、働く人のことをもっとよく知らなければなりません。

そのためのヒントは、前回もあげた6つの側面にあります。
6つの側面とは、生理的側面、心理的側面、社会的側面、経済的側面、政治的権力に関わる側面、成果配分の側面です。

各側面でドラッカー教授は印象的な言葉を残しています。

■生理的側面:人は機械ではなく、機械のように働きもしない。
人にはそれぞれのリズム、スピード、持続時間があり、自らコントロールする存在であるということです。機械に合わせる仕事の仕方は、本来の姿ではありません。

■心理的側面:仕事とは人格の延長である。それは自己実現の源である。
苦楽一対。仕事は、苦の元でもありますが、それゆえ楽しい存在でもあります。
体験したことはありませんが、毎日が休日であることは、たぶん楽しいことではないことは何となく想像することができます。辛く苦しい中に一筋の光がある。
苦しいを楽しいに変えることができる人が成長を手にすることができるのだと思います。

■社会的側面:組織社会では、働くことが人と社会をつなぐ絆である。
絆のある社会の実現。それは、第一次世界大戦後の荒廃し絆を失ったヨーロッパをみたドラッカー教授の問題意識の原点です。その絆を得るためには、仕事が必要不可欠だというわけです。それゆえ失業を必要以上に敵視します。戦争と恐慌こそは、絆を失う根源だと。地域コミュニティが失われつつある今、仕事をとおして絆を育てることが欠かせません。

■経済的側面:仕事は働く者にとっては生計の資である。存在の経済的な基盤である。
存在の基盤という言葉には、二つの意味があります。一つは、賃金という形で一人ひとりの生計を支えます。もう一つは、仕事が利益という形で組織の資本を生み出し、組織を支えます。したがって仕事のみが、社会の経済的基盤を支えるエンジンだということがわかります。

■政治的側面:働く者全員が何らかの権力構造の中にある。
権力というとオドロオドロシイのですが、要は「何時に出社せよ」という命令に誰もが従っている現実を表現しています。仕事の指示、人事異動・昇進など誰かが誰かに影響を及ぼしています。このことを権力構造の中にあるといいます。

■成果配分の側面:再配分の決定は経済的たりえず、政治的たらざるをえない。
成果は組織の外部からもたらされます。一方組織内はすべてコストです。
しかしコストと成果の対応関係を完全に明らかにすることは不可能です。
つまり配分は、経済的問題として処理することはできないのです。
誰かがエイヤッと政治的に結論を出すしかないのです。

以上のように仕事には様々な側面があります。どれが優先度が高いということはありません。それぞれにそれぞれの力学があります。
したがって時々にバランスを取りながら進めることが求められます。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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