コンセプト、原理、ビジョン【経営のヒント 777】
オーナー経営者がワンマンで経営する企業からマネジメントを擁する企業への変身は、液体から固体への物質の変化に匹敵する変化である。
『経営の真髄』<下>p.7
ワンマン経営はあってもワンマン・マネジメントは存在しません。つまりマネジメント不在です。ワンマンという「人」に依存していたのでは、組織の存続はいつか危機的タイミングを迎えます。このことについては、特段の説明を要しないと思われます。
いかに人への依存度を低めるか、それがマネジメントです。液体から固体へというような劇的な物理的変化は、「コンセプト、原理、ビジョンを変えないかぎり起こしようのない変化である」とドラッカー教授はいいます。
マネジメントとは、コンセプトを用いて原理を語ることです。たとえば、「成果」はマネジメントにおける重要コンセプトです。コンセプト、概念には必ず<意味内容>があります。
成果の<意味内容>は、「顧客に起こる変化」です。「成果」という言葉を使って、たとえば「成果は、顧客にとっての価値から生まれる」は原理です。この文章には「成果」「顧客」「価値」というコンセプトが使われています。コンセプトを用いて原理を導きます。
もしこのような原理を知っていれば、「顧客にとっての価値」の正体を特定したくなるでしょう。このように原理には、なすべきことを特定し、行動に導くという役割があります。マネジメントは、コンセプトと原理に習熟することです。
ビジョンは、時間をかけても到達したい場所です。行き方はさまざまですが、ビジョンが示されてはじめて組織は方向づけられます。これによって資源とエネルギーの集中が生まれ、到達への道のりが起動します。
コンセプト、原理、ビジョン、これらのマネジメントの道具を意識的に使ってマネジメントの腕を磨いていきましょう。「人」に依存するのではなくマネジメント能力、つまり道具の習熟(腕)に依拠した経営を志しましょう。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)