課題化されないかぎり問題は解決されることはない【経営のヒント 778】
マネジメントが成果をあげるには、組織の目的の達成に必要な課題を中心にして仕事を組み立てなければならない。
『経営の真髄』<下>p.8
理想の姿はあるが現実は問題だらけ…。問題とは現実と理想とのギャップのことです。課題とは、このギャップを解消するためになすべきこと。
現実は問題なのか課題なのか、ゴチャゴチャになっていることが多いと感じています。課題化されないかぎり問題は解決されることはありません。
「リーダーシップを発揮できない」という問題意識は、一つの理想的な姿をイメージしながら現状を一個人がモヤモヤ感じている状態といえます。しかし「理想的な姿」は、人それぞれ異なるのが現実ではないでしょうか。理想的な姿がバラバラでは、それは組織やチームが共有する問題ではなく、その人から見える問題にとどまります。せいぜい問題意識というレベルです。
どうすれば、組織やチームで問題を共有できるのでしょうか。そのためには、理想的な姿を共有しなければなりません。その際に役立つのがマネジメントの原理原則です。たとえば次の言葉がそれを教えてくれます。
「リーダーが最初に行うべきことは、全員が、ミッションを目にし、耳にし、それとともに生きることができるようにすることである」『非営利組織の経営』
このドラッカー教授の原理原則から、「リーダーは、人ではなくミッションにリーダーシップの源泉を求める」を導き出すことができます。
ここから、ミッションを指針にリーダーシップを発揮していることが、理想的な姿であることがわかります。理想的な姿がわかれば、組織やチームで問題を共有することができます。
たとえば、人の性格や能力によってリーダーシップを発揮しようとしていることが問題なのかもしれませんし、ミッションを有効に使っていないことが問題なのかもしれません。
問題を共有することができてはじめて課題化することができます。たとえばミッションを朝礼で唱和するだけでなく使い方を考え実践することが課題になり、はじめて解決方法を考えることができます。
個人の問題意識→組織やチームでの理想の姿の共有→問題の共有→課題化→解決方法
一連の流れを通して、はじめてマネジメントの仕事の優先順位が決まります。あなたの組織やチームの課題は何ですか。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)