マネジメント・サイエンス【経営のヒント 320】
今日は『マネジメント』<中巻>第40章「マネジメント・サイエンス」からお伝えします。第37章~第40章は「マネジメントのスキル」がテーマになっています。
いきなりマネジメント・サイエンスというと困惑する向きにあるかと思います。例えば、ドラッカー教授の理解では、複式簿記もこの領域に入っています。在庫管理、生産管理など様々なものがこの領域に入ります。定量的な分析ツールと考えていただければ間違いありません。
しかしマネジメント・サイエンスの使い手であるマネジメント・サイエンティストとマネジメントの間には、なかなか解消できない溝があります。「マネジメント・サイエンスには一つ前提とすべき重要なことがある」とドラッカー教授は指摘しています。
以下、今日の一言がその前提です。
<ドラッカーの一言>
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企業とは、共同の事業に対して自らの知識、
スキル、心身を投ずる人たちからなる高度の
システムだということである。
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『マネジメント<中>』p.178 1973年 ダイヤモンド社
そして機会のシステム、生物のシステム同様、企業のような社会のシステムも有機的な存在であると述べました。
システムは、部分が全体に影響を与え、全体が部分に情報等をフィードバックするという性格をもっています。経営をいくら分析的に見ても、最後は意思決定という統合された非定量的な、もしくは定性的な判断に帰着します。
マネジメント・サイエンティストなどの専門家がこのことを忘れて部分最適を優先して分析などを行うと、誤った問題に対処することになりかねません。マネジメントがこれら専門家の正しい使い方を心得ていなければならないのです。
ドラッカー教授は、「重要なことは、部分の効率ではなく、成長、均衡、調整、統合の結果としての全体の成果である」ことを使うほうも使われるほうも理解していなければなりません。
全体のこととバランスのことに対する判断ができるのは、トップ・マネジメントだけなのです。
佐藤 等