管理手段【経営のヒント 311】
引き続き『マネジメント』<中巻>第39章「管理手段」からです。
<ドラッカーの一言>
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データ化できないものについての配慮を忘れた
データ化は、組織を間違った方向へと導く。
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『マネジメント<中>』p.164 1973年 ダイヤモンド社
ドラッカー教授は、企業の管理手段には3つの特徴があるとし、「第三に、管理手段は定量化できないものについても必要である」としました。定量化された管理手段の典型例に会計情報があります。
会計情報に見られるように定量化されたデータ、あるいは情報には共通の特徴があります。第一に、多くの場合、内部データであることです。
管理手段は、継続性が求められます。それだけに内部にあるデータを収集、蓄積して、何らかの意味のある情報に加工し管理に用いているというのが一般的な姿です。
第二に、定量化されたものは、過去のデータを基にしているということです。
定量化されたものに未来のデータは含まれることはありません。未来に関わる確定データ、情報は存在しません。もちろん予測データはありますが、管理という目的には使うことはできません。
これらの特徴から言えることは、定量化=データ化されたものは、偏った情報しか伝えていないということです。定量化という可視化によって明らかになったものがすべてではないということです。
前回指摘したとおりですが、未来の、定性的な、成果に結びつく情報やデータは外部にあるということを忘れてはなりません。「見えないものはない」のではなく「見えないもの、もしくは見え難いものにこそ重要なものがある」と考える姿勢が大切です。
ドラッカー教授は、「欠けたもの」という思考を持っていました。
例えば「非顧客」は、その典型です。非顧客に関するデータは、通常の組織では持っていません。定量化、データ化になじまないものです。
例えば「私たちのお客様になっていない理由は何か」という問いに対する答えが重要な情報になります。これは定性情報です。とても重要な情報だと思いませんか。「データ化できないもの、定量化できないものへの配慮は欠かせない」という今日の一言を意識することで、重要な情報を逃がさない姿勢が身につくのです。
佐藤 等