管理手段【経営のヒント 310】
今日も『マネジメント』<中巻>第39章「管理手段」からです。
<ドラッカーの一言>
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今日の組織が最も必要としているものが、
外に向けた感覚器官である。
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『マネジメント<中>』p.162 1973年 ダイヤモンド社
ドラッカー教授は、企業の管理手段には3つの特徴があるとし、「第二に、管理手段は成果に焦点を合わせなければならない」とした。
組織の成果は組織の外にあります。内部にあるものはコストセンターにすぎません。製造やマーケティング、販売といった行動であっても内部コストにすぎません。成果は顧客がもたらすものです。
ところが、過去1世紀にもわたってひたすら集めてきたのは内部行動に関するデータでした。売上高ですら内部データにすぎません。外部で最も価値あるデータとは、顧客が持っているものです。事業の目的である顧客の創造に資するデータです。さらに重要なデータとは、イノベーションのための外部環境に関するデータです。
しかし一方で、組織が「外部に生み出したものを記録し、定量的に把握するための手段はほとんどない」とドラッカー教授はいいます。
この現実がドラッカー教授をして「外に向けた感覚器官」と言わしめました。
感覚器官は知覚を目的としています。定性的なものを感じる器官です。
今日の言葉にある「成果に焦点をあわせる」とは、外に向けた感覚を研ぎ澄ますことでもあります。
顧客が価値と感じているものは、定量的に測ることはできません。
非顧客から定量データを入手することは困難です。ドラッカー教授はこんな例もあげています。「アメリカ系グローバル企業のキューバ子会社は、いずれも南米では最もよくマネジメントされ利益をあげていた。いかなる問題も起こしてはいなかった。しかし、すべて没収されて国有化された」。
外部の情報やデータへの感覚が疎くなるとこんなことも起こってしまいます。
感覚を研ぎ澄まし、知覚能力を高めることが管理手段の有効性を劇的に変えることは間違いありません。まずは意識を切り替えることから。
内部にあるのは過去の定量的なデータ、しかもコストデータだけです。
未来の、定性的な、成果に結びつく情報やデータは外部にあるのです。
佐藤 等