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規模のマネジメント【経営のヒント 361】

氣持ちも新たに361号をお届けします。
第55章「規模のマネジメント」の続きからです。
まずは今日の一言から。

<ドラッカーの一言>
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不適切な規模は進行性の病いである。
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『マネジメント<下>』p.95 1973年 ダイヤモンド社

358号で「規模の誤りは、組織にとっての体力を消耗させる業病である」という言葉を紹介しました。
小さすぎる規模の不適切さとともに、大きくなりすぎた規模の不適切さがあることを指摘しました。
それは企業の体力を消耗する病です。
しかも進行性の病だといいます。

病の進行を早める代表的な意思決定は、大きくなりすぎた機能を支えるため、さらに売上を増やそうとすることです。
病状をさらに悪化させます。

ドラッカー教授が示した処方箋は3つです。

1)事業の性格を変え、何らかの特徴を身につけること
2)M&A(合併と買収)
3)売却と整理

1):実にシンプルな処方箋です。
事業の性格を変えることは最も難しいとドラッカー教授はいいます。
1960年代半ばまでビック3に伍して戦っていたアメリカン・モーターズがなぜフォルクスワーゲンになれなかったのか。
それは特徴のない4番手だったからです。
売上を増やして3番手を狙ったところに落とし穴がありました。
結局1987年にクライスラーに吸収されました。

2):ドラッカー教授は、基本的にM&Aを推奨しません。
しかし、規模の不適切さの解消として用いるM&Aは例外的です。
その際の注意点は、量を求めず、質を追求することだといいます。
自社の不適切さの原因を見つけ、適切な組み合わせで完全体を目指すこと。これがM&Aの要諦です。
少し前、円高下で日本企業が海外企業の買収に取り組みました。
それぞれ補完関係という視点で見ると面白いと思います。

3):売却と整理はあまり氣が進まない選択肢です。
ドラッカー教授は、検討さえされないかもしれないが、最も成功しやすい戦略だと明言しました。
可能なときには、常に採用すべしと断言しています。
1991年タイプライター事業、1998年ネットワーク事業、2002年ハードディスクドライブ事業、2004年パーソナルコンピューター事業と非コア事業を売却しコア事業に集中したIBMの戦略などの成功事例が頭に浮かびます。

以上は、不適切な規模の大きさになってしまったケースですが、資源と市場の集中という観点から、企業体質の改善の際にも威力を発揮する処方箋です。
「何に集中するのか」は、常に検討を要する問いなのです。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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