多角化への誘因【経営のヒント 362】
今日は、第56章「多角化への誘因」からです。
<ドラッカーの一言>
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
これまで長い間、多角化すれば業績が
あがると信じられてきた。そのような
ことはない。事実に反する。
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
『マネジメント<下>』p.112 1973年 ダイヤモンド社
53~55章では、組織の規模についてあるべき姿を見てきました。
規模のマネジメントが必要な根本的な理由は、複雑性とどのように折り合いをつけていくかということです。
56~58章では、多角化を取り上げます。
多角化のマネジメントが必要な理由は同じです。
複雑性とどう付き合うかです。
つまり組織は、多角化するほどマネジメントしにくくなるということです。
逆説的ですが、よりシンプルな多角化を目指すことが求められます。
1)共通の市場のもとに、事業、技術、製品、製品ライン、活動を統合することで一体性を高める
2)共通の技術のもとに、事業、市場、製品、製品ライン、活動を統合することで一体性を高める
多角化の反対語は特化です。
ドラッカー教授は、一つの明確なミッションをもち、一つの分野、市場、製品に卓越する企業に成功物語が多いことを明らかにしました。
多角化は神話だというのです。
多角化する場合でも、市場に特化して事業、技術、製品などにバリエーションをもたせ多角化するか、もしくは技術に特化して事業、市場、製品などを多角化するのが鉄則です。
ドラッカー教授は、複雑になりすぎマネジメントできなくなった状態について核心的な一言を述べました。
「マネジメントが、事業とその現実の姿、そこに働く人、経営環境、技術を自らの目で見、知り、理解することができなくなり、報告、数字、データなど抽象的なものに依存するようになったとき」がその時だと明言しました。
ドキッとさせられる一言です。
多角化は、その抽象的なものに依存する可能性を高めることになります。
何に特化し、何を多角化させるかは、組織の成果に直接関わります。
すでに多角化している組織、これから多角化を考えている組織は、この観点から一度おさらいをしてみてください。
また、多角化といえないまでも、同様な観点から見直してみてください。
佐藤 等