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人のマネジメント上考慮すべき側面は5つある【経営のヒント 586】

「人のマネジメント」における人がもつ5つの側面を深掘りすることで可能な限り多くの
原理を取り出しています。

今日で最後になりますが、前回同様、人の多面性を5つの側面で表現した原理の復習からです。

人のマネジメント上考慮すべき側面は5つある―
1.生理的な側面、2.心理的な側面、3.社会的な側面、4.経済的な側面、5.政治的な側面である。
<マネジメントの原理45>

今日は5.の政治的な側面についてさらに検討します。

第579号では、このように述べました。
働くことは、誰かの影響を受けるということです。
組織社会では、人は組織の方向性の中で仕事をし、仕事の指示を受け、人事異動や昇進で仕事の
役割や内容を変えます。
また決められた時間に出社し、誰かが決めた仕事を日程どおりに行います。
つまり働くということで知らず知らずのうちに権力構造の中に身を置いているのです。
ドラッカー教授は、これを政治的側面と表現しました(579号から再掲)。

政治的側面とは、組織の意志と言ってもよいと思います。

組織やチームは、誰かが方向づけることではじめて意志をもつ
<マネジメントの原理81>

たとえば、こういう仕事ぶりは賞賛されるとか、その結果としてこういう仕事ぶりの人は
昇進するというメッセージは、ある組織の基準が決められていることを意味します。

再度、579号からの再掲です。
組織が行う事業は、社会と無関係に存在することはできません。
事業の価値は顧客が決めます。
事業は仕事というプロセスを通して実現します。
したがって仕事は顧客が決めると表現することも可能です。
現実には、あるべき仕事は顧客のために現場の誰かが決定します。
568号で示した<マネジメントの原理33>と関係しています。
事業というプロセスを業務、仕事、作業に分解する。

自分で仕事を決めていると思っているかもしれませんが、大きな視野で考えると顧客が
考える価値を提供するために仕事は設計されているといえます。
これまた他人が決めたものによって、つまり人が働く際の政治的な側面に影響されている
ことがわかります。
しかも事業の提供プロセス(仕事の設計)は、その都度の意思決定ではありません。
すべての人がその都度、自由に意思決定して仕事をしていたら大変です。
混乱とコストの増加で事業の継続性を保つことができないからです。

組織やチームを方向づけるには意思決定という手順が必要である
<マネジメントの原理82>

組織の方向づけの基本に顧客がいる
<マネジメントの原理83>

これらの原理は、組織という機関(道具)を効率よく使うための人類の知恵です。

一方、現代社会は、知識社会であるいわれます。
そのような社会では現場にいる人が最先端のノウハウや経験をもっていることも少なく
ありません。
そのような現場では、指示命令という権力の使い方では機能しません。
組織やチームの方向性を示し、あとは現場において自分で考え、決定し、行動すること
が求められます。
彼らは知識労働者と呼ばれます。

そこでは、一定の範囲で選択することが任される領域が責任とともに生じます。
これが知識社会における組織の権力構造の基本です。

知識労働者は、自分で考え、自分で決定し、自分で行動するひとである
<マネジメントの原理84>

知識労働者は、組織の方向づけを基準に、自ら考え、決定し、行動する
<マネジメントの原理85>

次回から数回にわたり、人のマネジメントに関してまだ触れていない部分を
フォローします。

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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