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コミュニケーションについて考えてみます【経営のヒント 589】

前回から人のマネジメントに関してまだ触れていない部分をフォローしています。
今日は、ドラッカー教授が示したマネジャーの5つの仕事(以下に再掲載)の中から
コミュニケーションについて考えてみます。
1.目標を設定する
2.組織する
3.動機づけとコミュニケーションを図る
4.評価測定する
5.人材を開発する

ドラッカー教授はコミュニケーションについて4つの原理をおいています。
コミュニケーションの前提として押さえておきたいものです。

1.コミュニケーションと情報は異なる<マネジメントの原理95>
2.コミュニケーションとは知覚である<マネジメントの原理96>
3.コミュニケーションとは期待である<マネジメントの原理97>
4.コミュニケーションとは要求である<マネジメントの原理98>

それぞれ少し説明します。
1.コミュニケーションと情報は異なるという原理ですが、これはある人との間にある
情報伝達のパイプラインのようなものをイメージしていただければよいと思います。
パイプラインの太さや弾力など人によって異なります。
たとえば新入社員と10年勤めている中堅社員を比べれば、後者の方が社会や社内での
経験値がある分、柔軟で瞬時に大量のコミュニケーションが可能です。
このパイプラインの中を流れるのが情報です。
両者は、何を(情報)どうやって(コミュニケーション)双方向で流通させるかという
関係にあります。

2.コミュニケーションとは知覚であるという原理についてです。
相手に情報が届いているかという観点から見た場合、その情報を認識できるかということに
目を向けなければなりません。
たとえば、私は韓国語をまったく理解できないので何を言われても音が聞こえるだけで
その意味を認識することはありません。
何か話しているようだという以外に、何も知覚していないという状態です。
つまりコミュニケーションは相手が認識できる言葉で伝えなければ成立しないということ
です。
「大工と話をするときは大工の言葉を使え」とはこのことを象徴的に示したソクラテスの
言葉です。

3.の期待とは、「情報の受け手の期待」だということです。
人は期待したものをよく受け取るといわれています。
逆に、まったく期待していないものは受け取りにくいということです。
最悪、受け取り拒否(無視)ということもあるわけです。
したがってコミュニケーションをよくとるためには、この期待を利用することが効果的です。
相手の期待を知りコミュニケーションすることが重要だということです。

4.の要求とは「情報の発し手の要求」です。
コミュニケーションの目的は、指示や命令のときはもちろん、情報提供の場合にも知識労働者が
その情報を用いて自ら考え、自ら決定し、自ら行動する際に相手側に何らかの変化をうながす
ものです。
具体的には、考え方や行動が変化することです。

これら4つの原理を踏まえてはじめてコミュニケーションが成立します。
これらの原理は、すべて満たしていれば上手くいくということではありませんが、これらの
どれかに反していれば必ず失敗するという原理に関する法則が適用されます。
今一度、自身のコミュニケーション・スタイルを確認したいものです。

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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