組織の目標は、ミッションや成果の下位にあって組織を方向づける役割を担っている【経営のヒント 596】
今回も目標に関する原理をまとめていきたいと思います。
ドラッカー教授は、マネジャーの仕事として「目標設定」と「評価測定」を挙げて
います。
<マネジャーの仕事 再掲>
1.目標を設定する
2.組織する
3.動機づけとコミュニケーションを図る
4.評価測定する
5.人材を開発する
前回も指摘しましたが、このテーマは少々複雑です。
それゆえ実務的には誤解も多い領域です。
目標に関する主な局面は以下のとおりです。
1.目標設定
2.目標進捗に関する測定
3.目標の評価
4.フィードバック
これらの局面は全社、部門などでも行われるとともに自己目標管理という個人レベルでも
行われます。
このあたりの仕組みの趣旨をよく理解しないとせっかくの取り組みも台無しになってしま
います。
最も多い誤解・誤用は、自己目標管理を組織の昇進や昇格と結びつける運用です。
自己目標管理の目的は自己成長にあります。
ここに組織の評価という点が入り込む余地はありません。
自己目標管理における評価の原則は、自己評価です。
今日は、全社や部門の目標と自己目標管理の関係性に触れたいと思います。
前々回も触れましたが「目標設定」の局面での注意点は、評価者自身が「自己決定」する
ことです。
これが大原則です。
その際に、個人は「組織への貢献」という形式で記述することになります。
「貢献」は組織が成果をあげるために必要なセルフマネジメントの要となるコンセプト
です。
すなわち「一人ひとりが成果をあげるためにあなたはどんな貢献をしますか」を具体的に
自問することです。
これが自己目標の基本的な表現形式となります。
目標設定の局面で、組織が関与するのは「組織の成果を明示すること」、その成果を
理解しているかをマネジャーは部下に対して確認することです。
成果を誤解し、間違った方向づけをしないように気をつけなければなりません。
「貢献」という形で規定された自己目標に関する進捗情報は、事前に決められた測定対象
と測定尺度に基づくものを組織から提供を受けます。
個人はその情報を活用することで自己評価を行います。
自己目標に関する次の局面は「自己目標の評価」です。
自己目標は自己評価しなければなりません。
目的は自己成長だからです。
それゆえ「自己目標」を、上司が組織のための評価に使ってはなりません。
制度の目的がまったく異なるからです。
組織の目標と自己目標は、直接リンクしていません。
自己目標における評価は、重要なのは、貢献の範囲が広がること、範囲は同じでも深まる
こと、貢献する能力が高まることを確認することです。
個人におけるフィードバックの目的は自己成長です。
これまでの1年で足りなかったものを次の1年で挑戦対象とし、貢献と強みの伸長として
反映されることが重要です。
ここで<マネジメントの原理104>と<マネジメントの原理105>を再掲し、新たな原理を
補充しておきます。
前2回を振り返って組織の目標と自己目標管理とは、まったく異なる目的のツールである
ことを確認してください。
再掲―<マネジメントの原理104>
自己目標管理の目的は自己成長にある
自己目標の決定に組織は関与せず、自分自身で決定する
自己目標は部門やチームへの貢献という形で定める
自己目標の評価は自分で行う
組織の関与は、自己目標のための成果に関する情報提供にとどめる
再掲―<マネジメントの原理105>
組織の目標は、ミッションや成果の下位にあって組織を方向づける役割を担っている
<マネジメントの原理106>
マネジャーは、組織の成果の理解の促進を図り、部下が自己目標を適正に設定することを
支援する。
<マネジメントの原理107>
組織の成果から組織の目標は導き出され、組織の成果から一人ひとりの貢献という形式で
自己目標は導き出される。
それゆえ組織の目的と自己目標は直接の関係を有さない。間接的に組織の成果を介して
関係性をもつにすぎない。
次回以降は、組織目標について重要なポイント-参画、測定対象、測定尺度など-に
ついて説明します。