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企業とは何か【経営のヒント 246】

第6章「企業とは何か」は、やっと今日で終わりです。
計6回も書いてしまいました。『マネジメント―課題、責任、実践―』の心臓部分といってもいい章です。ここだけでも本文をお読みいただくことをお奨めします。約20ページにエキスが凝縮されています。

<ドラッカーの一言>
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企業には最低限あげるべき利益というものがある。
それらは自らの将来のリスクをカバーし、事業を
継続していくために必要とされる利益である。
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『マネジメント』p.90 1973年 ダイヤモンド社より

私たちは、利益を手にとってみることはできません。売上から費用を引いた“差額”を利益といいます。そうです、利益とは差額“概念”なのです。また利益は目的ではありません。ドラッカー博士は、利益は存続の条件であるといいます。存続の条件とは、目的よりも厳しいものです。

ドラッカー博士は、利益の機能として第一に成果の測定尺度だといいます。
企業行動の結果、どのような成果が残せたかを測る唯一のものだといいます。
そして「利益という指標」を手段として、自らの行動を修正します。
これをフィードバックと呼びます。

利益の第二の機能は、不確実性のリスクに対する保険料だといいます。
今日の言葉は、このことを表したものです。経済活動は、資源を未来に賭ける行動に他なりません。利益は、資源を生み出す源泉です。利益なくして資源を未来に投下し続けることはできません。燃料がなくてどうやって走り続けることができるでしょうか。もうお分かりかと思いますが、企業が走り続けるためには、最低限の燃料を確保しなければならないのです。

過去の利益の蓄積を資本といいます。資本の金額(純資産)は、貯蔵された燃料の量を示しています。燃料の備蓄が多ければ多いほど、長く走り続けることが出来ます。今一度、皆さんの企業の燃料の備蓄量を振り返ってみて下さい。

資本は、多いにこしたことはありません。
しかし資本を増やす方法は、2つしかありません。資本金を増資するか、利益をあげ税金を払いつつ残ったものを積み立てていくしか方法はありません。
このことからすれば、税金を払うことを目標に据えてもいいくらいです。決して節税などというケチな思考に陥ってはいけません。そんなことよりも、企業存続の条件を強化することをお考え下さい。

確認になりますが、利益は目的ではありません。燃料を溜め込むことを目的にしていることは、おかしなことです。燃料は使うためにあるからです。
利益は、目標にはなります。しかし最低あげるべき利益を超える利益目標をクリアすることで、未来への賭金を増やし、はじめて企業は成長軌道にのることができるのです。

「利益」とは、使い古された言葉ですが、本質的な役割を今一度考えて進みたいと思います。企業も事業もそこから始まります。頭の中の「利益」の位置づけ、リセットして臨みたいものです。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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