企業とは何か【経営のヒント 245】
今日も『マネジメント―課題、責任、実践―』、第6章「企業とは何か」からです。
今日の一言は生産性に係わるものです。
<ドラッカーの一言>
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顧客の創造という目的を達するには、富を生むべき
資源を有効利用しなければならない。
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『マネジメント』p.84 1973年 ダイヤモンド社より
従業員一人当たりの売上、利益、付加価値などの経営分析の数値について、耳にしたことがあるに違いありません。あるいは飲食店などでは一人1時間当たりの売上を測定することもあります(人時生産性)。
この数値の意味するところは何でしょうか。
成果としての売上や利益、付加価値をアウトプットとし、人の数をインプットととらえています。アウトプット÷インプット=生産性。これが基本です。たとえば、一人当たり付加価値。その企業が従業員一人当たりいくら付加価値を生んだのか、というような情報をつかむことができます。さらにこの数値の意味するところを考えてみます。
<従業員一人当たり>をインプットとしてとらえているという意味を考えてみたいと思います。「人」ひとりということは、頭数ということです。なるほど少ない人員で成果をより多くあげるのが生産性の基本です。しかしここにマネジメントの限界があります。頭数だけマネジメントするということは、ラインを持つ工場などの生産性をみるには最適かもしれませんが、デスクや人に向かって仕事をする人間たちの生産性を問うには限界があります。
なるほど少ない人員で、より多くの売上を上げる営業部の生産性は高いかもしれません。しかし営業の成果が頭数だけではないことは、私たちは知っています。ドラッカー博士は、コスト中心にインプットを考える従来の方法だけでは、生産性のマネジメントに限界があることを指摘しています。
これまで資源として把握してこなかったものをインプットとして意識することを述べています。第一に知識です。現代社会では、一人ひとりが保有する知識の質や量は千差万別です。どれだけの知識を保有し、活用しているかによって成果は格段に違ったものになります。10人の平均的なデザイナーよりもずば抜けた一人ひとりのデザイナーが企業に成果をもたらすのです。
そう考えれば、頭数で生産性をマネジメントすることの限界を理解できるのではないでしょうか。従業員一人ひとりの経営資源としての知識をマネジメントすることが求められる時代です。数値による測定は難しいかもしれません。しかし測定できないものは、マネジメントしなくていいという考え方は誤りです。
知識の他にも時間の使い方により生産性に格段の差が出ます。
時間管理は、ドラッカー博士が成果をあげる能力の一つとして掲げたものです。
知識や時間の管理は、一人ひとりがマネジメントすることが基本です。いまや生産性の問題は、組織だけが取り組む問題ではなく、むしろ働き手が自己実現の重要な手段として取り組むものになったのです。
ちなみにドラッカー博士は、知識や時間の他に製品の組合せ、資源の組合せ、企業の強み・弱み、組織構造などマネジメントの巧拙が生産性の決定的な差を生むことを指摘しています。ドラッカー博士が本書で指摘したのは1970年代です。
しかし未だに大きな課題です。生産性のインプットの要素が大きく変ろうとしています。測定は不可能でも取り組まなければならない時代なのです。
まずは身近なところから考え始めたいものです。
佐藤 等