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企業とは何か【経営のヒント 241】

今日は『マネジメント―課題、責任、実践―』、第6章「企業とは何か」からお伝えします。
今日の一言は、ドラッカーの至言のなかでも最も有名なものです。

<ドラッカーの一言>
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企業の目的は、それぞれの企業の外にある。
企業は社会の機関であり、その目的は社会にある。
企業の目的の定義は一つしかない。
それは顧客の創造である。
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『マネジメント』p.58 1973年 ダイヤモンド社より

ドラッカー博士は、企業を知るには、まず目的から考えなければならないとして、この言葉から始めました。
よくある誤りは、「企業の目的は利益をあげることである」としてしまうことです。
利益は、必要欠くべからざるものですが、目的にはなりません。
ドラッカー博士は、利益は存続の条件であるといいます。
目標にはなっても、目的にはなりません。

利益は、企業という組織が前進するための燃料です。
資本という過去の利益の蓄積がその企業が走り回れる燃料の貯蔵庫です。
燃料を溜め込むことを企業の目的とするのはおかしい事です。
燃料はあくまでも手段です。何のために使うのかが大切です。
ちょうど私たちの人生の目的としてお金を貯めることをあげることが間違った設定であることと同じです。
お金は手段、お金を使って何をするのかが目的です。

さて話を企業の目的に戻しましょう。
今年6月にファーストリテイリングの柳井会長兼社長がNHKでドラッカー博士のことを計4回、番組で語る機会がありました。
ちょうど「企業の目的は、それぞれの企業の外にある」というドラッカー博士の言葉を引用していました。
この言葉から大きなヒントを得たといいます。
来店しているお客様だけに目を向けてモノを売っていてもそれ以外に広がりがないと考え、まだお店に足を運んでないお客様をどのように振り向かせるか、そのためにどんな付加価値の高い商品を開発するかが必要だと述べています。
こうして生まれたヒット商品がユニクロのフリースやヒートテックです。

まさに新たな顧客を創造したのです。
それはまさに顧客の欲求を創造する行為です。
企業とは顧客の欲求を創造することを業としているのです。
そのための視点の転換となる言葉をドラッカー博士は次にように続けます。
「企業が生産していると思っているものが、まず重要なのではない。
顧客が買っていると思っているもの、価値ありとするものが決定的に重要である」と。
顧客のために提供しているものではなく、顧客の立場で提供しているものが重要だというのです。

一見同じようにみえる言葉でも、よくよく考えてみれば180度異なることがわかります。
視点を変えると意識と姿勢、そして行動が変りだします。
企業の変革の原点中の原点、それは企業の目的を見直すことにあるのです。
景気低迷の折だからこそ企業の目的を腰を据えて考えてみたいものです。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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