事業のマネジメント―シアーズ物語【経営のヒント 240】
今日も『マネジメント―課題、責任、実践―』、第5章「事業のマネジメント―シアーズ物語」からお伝えします。
今日の一言です。
<ドラッカーの一言>
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
シアーズ物語から得るべき重要な教訓は、正解は
頭のよさひらめきによって得られるものではない
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
『マネジメント』p.58 1973年 ダイヤモンド社より
ドラッカー教授は「正解は、終わってみるまではわからない」とも言っています。
言い換えると100%の成功はないということです。
長らくアメリカの小売業のトップの座にあったシアーズは、130年を超える歴史ある企業です。
その歴史は、イノベーションの連続でした。
最初のイノベーションは、交通手段が鉄道や馬車に限られていた農民相手にカタログ販売を行ったことでした。
ここで一括仕入れによる安価販売を導入しました。
また「満足いただけなければ返金します」と満足の保証を行いました。
当時としては画期的なイノベーションです。
次のイノベーションとして「シアーズ・モダン・ホーム」という住宅や自社ブランドの自動車販売などが挙げられます。
大型耐久消費財の販売へも進出しました。
自動車は失敗しましたが、住宅は10万棟を越え好評を得ました。
更なるイノベーションは、デパートという店舗形態を始めたことです。
すでにデパートという業態はありましたが、シアーズはモータリゼーションの到来を予期して意思決定しました。
そのために立地、建設、レイアウトについてイノベーションを行う必要がありました。
同社はこれらのイノベーションを成功させ、またこれまでの集約的なマネジメントを必要とする通販事業から全米の都市へと店舗網を広げる分散的なマネジメントに移行することに成功しました。
こうして1980年代初頭まで全米一位の地位を維持し続けました。
本書が書かれた1973年にあってシアーズは、紛れもない世界一の小売企業でしたが、ドラッカーはすでに10年後を予見する次のような言葉を残しています。
「ところが今日、そのシアーズさえ再び新しい挑戦に直面している。
その新しい挑戦が、かつてとまったく同じように、イノベーションと戦略を要求している。
(中略)近い将来、アメリカでは再び市場の変化がある。
しかるにシアーズは、それに対して戦略的に有利な位置にはいないのかもしれない」。
シアーズの歴史は、イノベーションの歴史そのものです。
その後のシアーズは、インターネット通販など見るべきものがありますが、低迷期に入っています。
北海道においても丸井今井が大手の傘下に入り、137年の歴史に終止符を打ちました。
デパート=百貨店という業態が時代に合わないなどともいわれていますが、いずれにしても時代の変化にイノベーションが追いつかなかったという事実だけは残ります。
最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るのではない。
唯一生き残るのは変化する者である…という例の警句を思い出さざるを得ません。
生き残るという「正解」は、何かを行った結果です。
事前に「正解」は、わかりません。
唯一わかっていることは、変化に対して何か行動を起こした者だけが生き残っているという事実だけです。
政権交代という変化が私たちの環境をどのように変えるか。
見極めつつ必要な行動を起こさなければならないのかもしれません。
佐藤 等