知覚の仕方の違い【経営のヒント 839】
MBOの最大の目的は、上司と部下の知覚の仕方の違いを明らかにすることにある。
『経営の真髄』<下>p.120
MBO(自己目標管理)という方法の中で、コミュニケーションの原理は最大限生かされます。
「MBOにおいては、部下は上司に対し。自分が組織全体もしくは自分の部門にいかなる貢献を行うべきであると考えるかを明らかにしなければならない」とドラッカーは言います。つまり部下が立てる目標は「貢献」という形式で表現するということです。
ドラッカーは「仕事とは人格の延長である。それは自己実現の源である」と言います。s仕事を通して成長することを制度にしたものがMBOです。
そのうえで上司と部下が貢献という形式で表現された目標を題材に向き合います。その目標が「上司の期待どおりであることは珍しい」とドラッカーは言います。違って当たり前です。なぜなら知覚しているものが異なるからです。
同じ事実を見ていても経験が異なるゆえ見え方が異なるのです。そこで冒頭の文章です。MBOを通して上司と部下の知覚の仕方の違いが明らかになるのです。あるようでない貴重な機会です。
ここでのコミュニケーションを通じて部下は学びます。ドラッカーが挙げた主なものは4つです。
・意思決定の現実
・優先順位の問
・達成したいことと達成されるべきことの選択
・意思決定の責任
これらは上司の個性ではなく、組織で働くがゆえに生じる上司の立場の複雑さに由来するものです。このような経験を経て上司の立場の一端を学びます。こうして部下は、上司の生かしかたを自然に習得してゆくのです。その根底に知覚の仕方の違いがあることを意識したいものです。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)