習慣を身につけるには「何を」「どうやって」が重要【経営のヒント 636】
<マネジメントと人間力>をテーマに綴っています。ここ数回は、社会人に必要なものとして伊與田先生が挙げられた<知識、技術、習慣、道徳>のうち「習慣」をテーマとしています。
前回は、ドラッカー教授の成果をあげる習慣的能力、コビー博士の「7つの習慣」、ベンジャミン・フランクリンの13の徳目をみてきました。
「習慣」には、「何を」という習慣化すべきかと「どうやって」という習慣化すればよいのかという2つの側面からのアプローチが必要です。前回見てきた三者三葉の習慣も、すべて「何を」という対象に関するものです。
ドラッカー教授は、習慣に従って仕事をしないエグゼクティブは、たいてい成果をあげていないことを発見したと述べました。知識労働者が成果をあげるのは才能ではなく習慣であるという信念が形成されました。「あなたは、どんな習慣を身に付けていますか?」と問われているのです。
「習慣は第二の天性!習慣の方が十倍も天性である」という老軍人ウェリントン公爵の言葉を著書『心理学』(1892)で紹介したのは、ドラッカー教授の著書にも登場するウィリアム・ジェームズです。『心理学』の第10章は「習慣」について述べており、私たちの生活が習慣の集まりであることを示しました。
これを裏づける研究成果を2006年アメリカのデューク大学の学者が発表しました。それによると私たちの行動の実に40%以上がその場の判断ではなく、習慣をよりどころにしているそうです。この数字の意味するところは、私たちは良くも悪くも習慣によって40%以上の行動が支配されているということです。「あなたは、どのような習慣を身につけていますか?」。成果の良し悪しは、良き習慣いかんです。
習慣を身につけるには、二つの要素が重要です。つまり、「何を」「どうやって」身につけるかです。たとえば、アメリカの父と評されるベンジャミン・フランクリンは、「決断:なすべきことをやろうと決心すること。決心したことは、必ずやり遂げること」など13の徳目としてまとめた自らの信念を1週間に1つの徳目の修得を目指し、年に4回この過程を繰り返したといいます。
習慣は身体の能力化されてはじめてその威力が発揮されるということです。それだけに時間の積み重ねが欠かせず、あとから追いかけても届かず、むろんお金をいくら積んでも手に入らないものです。習慣は、人間力向上に必要なものの中でも特筆に値するものだといえましょう。
佐藤 等(ドラッカー学会理事)