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多元社会の理論【経営のヒント 188】

ここ数回立ち止まっている章、『断絶の時代』第9章「多元社会の理論」。
今日もこの章からお届けします。
エキスたっぷりの章です。是非一読をお薦めします。

<ドラッカーの一言>
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前者の考えでは努力が意味をもつ。
後者では結果が意味をもつ。
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エターナル版『断絶の時代』1969年 ダイヤモンド社より

面白いテーマです。
この著書が書かれた1969年当時いまだ十分解明されていないマネジメントの基本問題の一つとして提示されたのが「成果が大切か、効率が大切か」という問いです。この問いに関連して発せられたのが今日の一言です。

成果と効率は両立しないことがあるといいます。
ドラッカー博士によれば、効率を重視する陣営は、正しく行えば結果は自ずとついてくるという思考で、成果を重視する陣営は、成果の80%は20%の努力によってもたらされると思考するといいます。
前者は、手続きや管理を重視し、平凡な者でも繰り返し結果を生み出せると考えます。
後者は、手続きや管理は必要悪とし、枠を超えた創造性が大切だと考えます。

ドラッカー博士の当時の結論はこうです。
「二つの考えは、私自身は後者を贔屓にしているものの、いずれもが必要である」。
手続きを成果よりも優先する官僚組織、成果に重点を置くあまり、規則を疎んじ経営者が逮捕されるベンチャー企業。
幸いにして私たちは、両極を見ることができます。
要は、どこでバランスをとるかの問題で、両方必要なことは間違いありません。

経営資源を企業という「仕掛け箱」に投入し、成果が生まれます。
これが企業のシンプルな姿です。
ここでは、まず「仕掛け箱」の性能を上げることが必要です。
そして「努力」という言葉は、経営資源の使い方を表す<インプットサイド>の言葉です。経営資源は、効率的に使うに越したことはありません。
本来手続きは、全体の効率を上げるために個の効率を犠牲にしたものです。
個の犠牲の総和が全体の効率を超えたときその手続きは非効率と呼ばれ害悪を垂れ流し続ける元凶となります。

<インプットサイド>では、もう一つ「効果性」という大切な視点があります。
知識労働者の資源の使い方の大いなる工夫です。
効果性とは、常に<アウトプットサイド>にある成果の大きさを意識しながら資源を使うことを意味します。「なされるべきことは何か」という問いこそが、その効果性を問うものです。
単に与えられたものをこなすのは、肉体労働者の働き方です。
少しでも改善しながら、あるいは創造性を働かせながら「努力」する。
そこでは、努力か結果かという二者択一の議論は意味をなしません。
知識労働者の働く秘訣を身につけることで正しい努力とより大きな成果を手にしたいものです。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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