方法論としての企業家精神【経営のヒント 180】
明けましておめでとうございます。
お蔭様でこの一月でこのメルマガも6年目に突入します。
新年早々のお題は、「方法論としての企業家精神」、『断絶の時代』第三章のテーマです。「方法論としての」という言葉がついていることがミソです。
企業家精神はアントレプレナーシップ(entrepreneurship)と訳されています。
接尾語-shipは、手腕や職務を現すときに付けられるそうです。人間の内面や心の部分に軸足を置く魂などを意味するspiritとは意味するところが違います。
私たちは「精神」という言葉を使うとき、spiritを意識するきらいがありますが、「企業家精神」という言葉は、前者つまり手腕や職務に通じる言葉なのです。
そう考えるとこの章のテーマ「方法論としての」は、ピッタリと理解できるのではないでしょうか。
<ドラッカーの一言>
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企業家精神は新しい違うものを創造する能力だ
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エターナル版『断絶の時代』1969年 ダイヤモンド社より
ドラッカー博士は、これまでの社会や経済を観察して、「企業家精神」が発揮された時代とそうでない時代を峻別しています。史上最初に現れた「企業家の時代」は、第一次世界大戦前の50年だといいます。この時代には、J.A.シュンペーターの名著『経済発展の理論』が1912年に出され、まさにイノベーションの実行者を「企業者」と呼ぶなど、この言葉が世に認知された時代でもあります。この時代に必要な能力こそが、今日の一言なのです。
その後、第一次世界大戦後の半世紀は、「経営管理者の時代」だといいます。
氏の言葉を借りると
「マネジメントする能力、すなわち既に知られていることを行う能力」
が必要な時代だといいます。この時代には、前の時代に生まれた新機軸を大量に、安く、早く、品質よく行うなどをコンセプトとした活動が中心を占めました。
さて、その後現れたのが本著の『断絶の時代』です。風向きが昨日とは違います。
昨日は、こうだったからという方式での予測が不可能な時代です。1970年頃から50年程度続くといわれるこの時代に必要な能力が「企業家精神」なのです。しかし前回の「企業家の時代」とは異なるといいます。前回は、自らの発明を自らビジネスにしたのですが、世はすでに組織社会。今回の「企業家の時代」の企業家は、組織全体が主体者です。既にある組織がどのように「企業家精神」を発揮し、新しい違うものを創造するのかを問われている時代なのです。
50年の地殻変動もあと10年と少しです。従来の「すでに知られていることを行う能力」に長けている企業の没落が続いています。「新しい違うものを創造する能力」を身につけ、発揮することで成果があがる時代も終末までカウントダウンの時期を迎えています。
一日も早い氣づきで自己改革を行った企業だけが次の時代に進めるのです。
新年の計画に次の時代を切り開く、自己変革をもたらす新機軸を描いてみませんか。
佐藤 等