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知識労働者の生産性が社会を変える【経営のヒント 168】

今回も『明日を支配するもの』の第5章「知識労働者の生産性が社会を変える」からお伝えします。
前回は、知識労働者の生産性をあげる6つの条件を列挙しました。
念のため再度掲載します。

(1) 仕事の目的を考える。
(2) 働く者自身が生産性向上の責任を負う。自らをマネジメントする。自律性をもつ。
(3) 継続してイノベーションを行う。
(4) 自ら継続して学び、人に教える。
(5) 知識労働者の生産性は、量よりも質の問題であることを理解する。
(6) 知識労働者は、組織にとってのコストではなく。資本財であることを理解する。
知識労働者自身が組織のために働くことを欲する。

今日の一言は、上記(1)に係わるものです。

<ドラッカーの一言>
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
知識労働者の生産性の向上のために最初に行うことは、行うべき
仕事の内容を明らかにし、その仕事に集中し、その他のことは
すべて、あるいは少なくとも可能な限りなくしてしまうことである。
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
『明日を支配するもの』(ダイヤモンド社)より

この一言を簡単にいうと、「仕事を定義して、それに集中しなさい」ということです。
ドラッカー博士は、「成果をあげる秘訣を一つあげるとすれば、それは集中である」、と言います。しかしその前に、集中する「所」、つまり仕事の内容と目的を決めることが先だというわけです。なかなか難しいのですが、次の問いが参考になります。
「行うべき仕事は何か」、「何を期待されているか」。
そして次に「仕事をするうえで邪魔なことは何か」を問います。

仕事が明確になったところで(2)の責任も負うことができます。何をマネジメントすればいいのかがわかり、初めて自律性を持つことができます。そして(4)何を学び、何を教えるかがはっきりと解ってきます。また自己変革のときを知り、(3)イノベーションを起こすことができます。すべては、仕事の定義から始まります。
(5)知識労働者の生産性は、仕事の定義により変わります。例えば、既存の製品の改善を仕事にする部署と新規製品の開発を仕事にする部署では、明らかに成果の形が違います。成果の形が違えば、生産性の指標も異なります。このように量ではなく質に依存する側面が強いことを理解しておく必要があります。
(6)知識労働者は、コストではありません。コストは、減らすことをよしとします。知識労働者は、資本です。増やすことをよしとします。しかしこの資本財は、流動性が高く、経営者はそれを保全する責任があります。最高の知識労働者を惹きつけ、組織にとどめる能力こそが、これからの時代の生存に必要な第一の条件になります。
今後ますます知識労働者の影響力が増してきます。それとともに知識労働者を使いこなす組織能力が求められる時代へとシフトしていくことは間違いありません。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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