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明日をかえるのは誰か【経営のヒント 165】

『明日を支配するもの』の第3章「明日をかえるのは誰か」は、なかなか終わりません。
お氣づきのとおり、この章は、「変化」をテーマにしています。
今日の一言は、この「変化」と反対の意味の言葉、「継続」との関係を表したものです。

<ドラッカーの一言>
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組織は、内外いずれにしても、継続性の確立を必要とし、
変化と継続の調和を必要とする。
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『明日を支配するもの』1999年

変化と継続は、一見相反する言葉のように聞こえます。そもそも組織は、一プロジェクトを終えると解散する様なものではなく、継続を前提としています。組織には役割があり、その役割を果たしているかぎり社会に生かされ続けます。顧客や市場において、他の組織と違う個性を持っていることによって、その寿命を長らえます。

ご存知のとおり我が国は、世界に類を見ない企業長寿国です。100年以上存続している企業も数万件あるといわれています。1000年を超える企業も数社あります。世界最古の企業は、578年創業の金剛組といわれています。ヨーロッパにも1000年を超える企業が数社ありますが、100年以上の企業はそう多くないのが実情です。

さてこれら「継続」を見事に成し遂げている企業には、共通点があります。
それは、これらの企業が「変化」に敏感に対応していることです。老舗が変化に敏感・・・なんだか不思議な氣がしますが、考えてみれば当然です。
変化に対応できなかったからこそ、継続できなかったのです。長寿企業は、「継続」のために「変化」し続けているのです。変化を当然のこととして受け入れて、これに対応し、継続との調和を図る。老舗企業のしたたかさが光ります。

「変化」は、ある時AからBにその姿と本質を一新してしまうものではありません。変化させないもの、つまり継続するものと変化させるものを峻別することが大切です。組織の使命や価値、強みなどは、容易に変わるものではなく、むしろ継続することが強固な基盤を築きます。老舗企業の家訓などは、その最たる例です。そのうえで変化すべきものを見定め、先陣を切って対応します。

私たちは、構造的な変化、根本的な変化の時代の真っ只中にいます。対応を求められています。未来は、自分たちの手で創らなければなりません。
当然リスクが伴います。しかし、未来を創ろうとしなければ、はるかに大きなリスクを招きます。未来を創る行動は常にリスクを伴い、継続を約束してくれるものではありません。しかし今の状況に留まっていては、遅かれ早かれ継続できないことは歴史が証明しています。そのときが来ても慌てないで、変化に対応すべき時を逃さないという覚悟で臨まなければなりません。変化に対応する革新的な行動対して組織は抵抗します。しかし、ここぞという時、経営トップは、断固として変化に対応しなければなりません。
私たち経営をあずかる者は、日頃そんな心構えを鍛錬しておきたいものです。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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