経営戦略の前提が変わる【経営のヒント 160】
今回も『明日を支配するもの』第二章「経営戦略の前提が変わる」から重要なメッセージをお届けします。今日の一言からです。
<ドラッカーの一言>
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二一世紀に入ってからの数十年というものは、
支出配分の変化が、人口構造の変化と同じように
大きな意味をもつ。
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『明日を支配するもの』1999年
人口構造の変化は、良く知られています。この変化は、経営戦略にも時として反映されています。これに対して経営戦略策定上、ほぼ無視された形となっているのが「支出配分の変化」です。
支出配分とは、顧客の全支出のうち、自社が提供するカテゴリーの製品やサービスに当てている割合のことです。この数字の増減を追いかけている者は皆無とまでドラッカー博士は言います。カテゴリー間の変化とカテゴリー内での変化の二つが重要です。二〇世紀は、政府、医療、教育、余暇といった産業のカテゴリーが増えました。この変化を知ることで自社の属する産業が成長産業なのか、衰退産業なのか、成熟産業なのかを知ることができます。国民所得や人口の伸張率よりも高い需要力があれば成長産業、下回れば衰退産業、ほぼ同じなら成熟産業ということになります。
自社が三つのうちどれに属するかは、なんとなく予想がつくのですが、転換点をいち早くとらえることで将来を大きく左右することになります。
ドラッカー博士は、どれに属するかで企業の姿勢や行動を質的に転換することを求められると言います。成長産業では、自らが未来をつくるという姿勢が必要となり、リスクをとりながらイノベーションを実現することが求められます。
また成熟産業では、コストや品質に的を絞り集中化することが必要となります。
さらにニーズの変化に適応できるような柔軟性、例えば外部とのパートナーシップなどが求められるのもこのカテゴリーに入る企業です。衰退産業では、量的拡大ではなくコスト削減と品質向上の体系的努力が必要です。例えば、広告宣伝などの無駄な出費を減らし、利益を確保する方向にシフトすることです。
自社が属する産業の趨勢に変化があるとき、姿勢や行動を変えるかどうかで変化は危機ともなり、機会にもなります。変化はコントロールできませんが、変化をとらえ意識を変えることで機会を生み出すことができます。
チャンスの女神に後ろ髪はないといわれます。
変化をとらえられる人とは、チャンスの女神が目の前を通るのが見える人です。
変化を見る目を養い、機会を増やしたいものです。
佐藤 等