明日を支配するもの【経営のヒント 157】
『明日を支配するもの』の第一章について、もう少し書かせていただきます。
前回は、ドラッカー博士が変化した「前提」として指摘しているものを2組7つあげました。今日は、そのうち<組織運営上の前提>について取り上げます。
3つの前提は、次のとおりです。
(1)マネジメントとは企業のためのものである
(2)組織には唯一の正しい構造がる(あるいはあるはずである)
(3)人のマネジメントには唯一の正しい方法がある
これらの前提は現在変化し、「新しい現実」に直面しています。
(1)は、マネジメントはNPOにも必要になっていること。
(2)は、追求されるべきは、それぞれの仕事に合った組織構造であること。
そして、今日のドラッカーの言葉は、(3)に関するものです。
<ドラッカーの一言>
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フルタイムの従業員でさえ、これからはボランティアのように
マネジメントしなければならない。
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『明日を支配するもの』1999年
上記の言葉、どんな意味でしょうか。それは、動機づけに係わる問題です。
報酬に対する不満は、やる氣を失わせます。しかし、報酬さえ上げれば動機づけをシッカリできるでしょうか。答えは、もちろんNOです。仕事の動機づけは、仕事そのものの満足から得る必要があるとドラッカー博士は考えます。
なぜボランティアが報酬を手にしていないのにも関わらず、一所懸命働くのか。
その行動のメカニズムからの学びこそが今日の一言に集約されています。
報酬を受け取ってもなお、自主的に働かない従業員を動かす秘訣がそこには隠れています。仕事が挑戦的であり、自己実現の手段となっていること。
そんな仕事環境がより高い動機づけと成果を生みます。
その他にも(3)の前提が変わったのには、理由があります。
例えば、少し前まで仕事の質は、同じ組織内では、大部分同質的でした。
上司は、下から叩き上げられどの階層の仕事も一応こなすことができました。
ところが最近は、仕事が多様化して質の違う仕事が多数出現しています。
例えば、ホームページの管理などこれまでに経験したことのない仕事が突然目の前に出現します。上司は、今まで経験のない仕事までマネジメントの対象とせざるを得ません。知識労働者が活躍する時代とは、一人ひとりが最高の専門家であり、唯一の正しい方法ではなく、多様な方法でマネジメントすることになります。
このような前提の変化を認識して、二一世紀の「新しい現実」に対応して経営を行っていかなければなりません。
知らず知らずのうちにそんな時代になっているのです。
佐藤 等