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重要なことに集中せよ【経営のヒント 151】

第5章は「重要なことに集中せよ」という成果をあげるために最も重要なテーマの章です。
第2章で経営資源である時間の量を確保する方法を述べていますが、ここではそれを使う際の質の高め方を述べています。秘訣は一時に一つのことに集中することであるとドラッカー博士はいいます。
この章では、そのための準備と心構えを私たちに示しています。

まずは準備から。準備の第一は計画的に過去を廃棄することです。
現在起こっていることの大半は、自らの過去の意思決定と行動の結果です。そして過去のことは、すべて程度の差はありますが陳腐化します。「まだ行っていなかったとして、いまこれに手をつけるか」を定期的に問いかけます。そうしなければ、過去に押しつぶされ明日のことを行うことができません。しかる後に「重要なこと」に集中するために優先順位をつけます。くれぐれも最初に優先順位をつけないことです。やってはいけないこと(廃棄すべきこと)のリスト化、つまり劣後順位をつけることが第一です。
そこで今日の一言です。

<ドラッカーの一言>
☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆
集中とは、『真に意味あることは何か』
『最も重要なことは何か』という観点から時間と仕事
について自ら意思決定をする勇気のことである。
☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆
エターナル版『経営者の条件』1966年 ダイヤモンド社

集中とは・・勇気のことである。今、真に大切なこと、重要なことを一つ決めるということは、何かを捨てることを意味しています。身をもって感じていますが、それには相当な勇気が必要です。日々の行動をみても「重要ではないが緊急なこと」に忙殺され、「緊急ではないが、重要なこと」が後回しにされている現実があります。いかに重要なことを意識して自分の時間に取り込むか、これが成果をあげるための最大の秘訣です。
一口に重要なことと言ってしまいますが、次のような観点で重要性を考える必要があります。
・問題よりも機会を優先して考える。
・組織の内部よりも外部のことを優先して考える
・過去ではなく未来を優先して考える
・横並びではなく独自に方向を優先して考える
・無難で容易なものではなく変革をもたらすものを優先して考える

最後にもう二つ秘訣を。一つは優先順のリストには、順位がついていても1番目が終わったとき直ぐに2番目を行わないことです。状況が変わっています。再度優先順位をつけ直して1番になったものを行うことです。二つ目は、余り多くの意思決定をしないことです。少数の、できればただ一つの重要なことを決めることです。したがって優先順位のリストは、今日やるべきことの<TO DOリスト>のごときものではありません。少なくとも数ヶ月から1年かけて行うべきもの、もしくはそれ以上の期間かけて行うべきもののことをいいます。

次回は、この集中すべきものを決める方法論「意思決定」について書かせていただきます。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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