強みを生かせ【経営のヒント 150】
第4章は「強みを生かせ」というテーマの章です。
長所伸展などという言葉もありますが、昨今の日本の教育は、一芸に秀でた者を排除する傾向があるように思えてなりません。そんな平均的秀才タイプ製造マシンから生み出された企業戦士たちに、強みはなんですかと問うてもなかなか即答は難しいようです。さらに社会に出れば減点主義なる言葉が支配しています。
そんな時代だからこそ40年前に書かれたドラッカー博士の一言は輝き、存在観を増しています。
<ドラッカーの一言>
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人の強みを探し、その強みを生かそうとしないならば、
できないこと、欠陥、弱み、障害だけを手にすることになる。
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エターナル版『経営者の条件』 1966年 ダイヤモンド社
人の弱みは、苦手、失敗などの形で顕在化して目立つことが多いと思います。
反面人の強みは、無意識を含めて自覚症状に乏しく、潜在的です。つまり何が強みか実はよくわからないという状況が大半です。一口に「強みを生かせ」といってもなかなかうまくいかないのは、自分の強みがわかっていないところに第一の理由があります。
したがってまずは、自分の強みを知ることが大切です。強みは、磨かれた資質と表現することができます。資質を発見する方法として『さあ才能に目覚めよう』(日本経済新聞社)は、示唆に富んだ著書です。34の強みの原石に出会うことができます。
その他の方法としてドラッカー博士は、事前になすべきことを記述し、実際良くできたこと、容易にできたことなどを定期的に振り返ることで自分の強みがわかるといいます(フードバック分析)。いずれにしてもまずは自分の強みをしっかりと認識することが大切です。ここで心がけなければならないのは、弱みの認識も同じくらい重要だということです。
なぜなら弱みを認識していないと、自分で弱みを補強しようと無駄な時間を投下してしまうからです。弱みを補強したとしてもせいぜい平均程度になるのが関の山で勝負になりません。弱みは、それに倍する強みで補うのが常道です。
「強みを生かせ」といっても、なかなかうまくいかない第二の理由は、その強みを一緒に仕事をする同僚に認識してもらうことが難しいからです。現代社会は、自分の仕事に誰かが付加価値を付けてくれる組織社会です。つまり自己完結型の仕事はあまりなく、多くの場合同僚、上司、部下と一緒に仕事をしています。ということは、自分の強みをこれらの人々に知ってもらい、活用してもらうのが成果をあげる近道であることがわかります。
夢々、人の弱みに着目して仕事を行わないことです。手にするものは、失敗、欠陥、障害だけです。とはいえ、弱みに目つむり、強みを引き出すには、相当の心の修練が必要です。
トップや管理者はそういった心の習慣も同時に身につける必要があります。
佐藤 等