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ボランティアから、無給のスタッフへ【経営のヒント 137】

今日は、第4部「人事と人間関係」の第3章「ボランティアから、無給のスタッフへ」からです。この章は、当時イリノイ州ロックフォードのカトリック司教区で司教代理を勤めたレオ・パーデル神父とドラッカー博士の対談です。
タイトルの説明が少し必要です。
従来「ボランティア」は、「補助者」という意味合いが強い存在でした。ところが成功している非営利組織では、「無給のスタッフ」という存在です。スタッフですから能力も成果も期待します。そんなバカな・・とお思いかもしれませんが本当です。無給でも喜んで働いてもらえる・・企業経営者にとっても大変興味深い示唆です。ここには、「働く」ということの本質が潜んでいます。

<ドラッカーの一言>
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心配しなければならないのは、能力の欠如よりも、
自信の欠如である
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『非営利組織の経営』 1990年 ダイヤモンド社

レオ神父が直接管理する学校や病院では、まさに「無給のスタッフ」を養成するためのリーダーシップ・プログラムを用いてトレーニングをしています。このプログラムは高い期待と基準を参加者に要求し、その結果、共通のビジョンをもった高い能力の献身的スタッフが養成されます。参加する多くの人は、経験がないことと何の訓練も受けていないことを自覚しおり、自信がありません。この2つを提供することができれば、給料の有無にかかわらず優秀なスタッフが養成されることを私たちに教えてくれます。
今日の一言は、そのことを示しています。変わる可能性を秘めた「能力」だけを見るのではなく、むしろ献身的に働く「姿勢」を見抜くことが私たち経営トップに求められていることだということがわかります。

この対談でドラッカー博士が「何か質問は?」とレオ神父に促します。
「無関心な人にどうやって刺激を与え、やる氣を起させるか」と神父は尋ねます。
曰く「キリストは12人の使徒しか選ばれなかったことを想い起こすべきです。
60人選んでいたらきっとうまくいかなかったでしょう」と。
リーダー的な人のみ動機づけることができるということです。これは組織運営の鉄則ですが10-15%のコア人材を育成し、次に平均的な層の人が変わり、結果として組織全体を変えることができることを、私たちは知ることが重要です。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

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