決算書のない決算【経営のヒント 130】
今日は、第3部「成果をあげるためのマネジメント」の第1章「決算書のない決算」
という一風変わった章からです。「決算書のない決算」というテーマは、利益という
成果指標がない非営利組織という意味で使われています。
今日の一言は、ドラッカー博士の反省の言葉です。
<ドラッカーの一言>
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あらゆる種類の関係者のビジョンを長期的な目標に
統合しない限り、いずれ、支持も、信頼も、尊敬も
失ってしまうということだった。
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『非営利組織の経営』 1990年 ダイヤモンド社
この言葉は、やや注意して読まなければなりません。ビジョンという言葉を使うとき、それは企業のビジョンという意味で使うことが多いと思います。ところがここで使われているのは「関係者のビジョン」、つまり関係者が目指すべきところはまちまちだ、ということを前提とした言葉なのです。企業の関係者は、お客様、従業員、株主、仕入先、債権者などがこれに当たります。さらにお客様も様々なニーズを持った方がおり、カテゴリー分けすることができます。
さてドラッカー博士の一言は、何を間違ったといって反省しているのでしょうか。
間違いの本質は、様々な関係者の短期的なニーズに個別に応えていると、行動に一貫性がなくなり組織がバラバラになってしまうことです。そしてその戒めとして組織は長期目標を持ち、これを中心に求心力を高めていく必要があることを述べているのです。
長期の目標と短期の目標のバランスを取りながらマネジメントを行うことが肝要です。
長期目標では、「顧客支持地域一番店になる」というように「よき意図」が表現されています。今月の「売上」という短期的な成果とは、なかなか結びつきにくいものです。
そのとき経営者は、はたと考え込みます。「お客さんに頭を下げても、とにかく売って来い」・・ぐっと堪えて、お客様の支持を得るための行動に時間とコストを集中投下して、結果として毎月の売上が上がってくる・・というような仕組みを考え、実行するという姿勢に切り替えることが大切です。支持を得るために何をすればいいのか、その為にどうやって強みを生かすのか。そんな思考回路が出来上がれば少しずつ事態は、解決に向かいます。
ドラッカー博士の反省から「支持と信頼と尊敬」が得られるようにするにはどうすればいいのか、一度立ち止まって考えたいものです。
佐藤 等