“仕事”に起こった変化【経営のヒント 114】
『ドラッカーの遺言』第3章は「“仕事”に起こった変化」です。
前回のメルマガ「いま」の捉え方から今回の「変化」へと進んで行きます。
リストラという言葉もすっかり定着した感がありますが、本質が変化して世に受け入れられています。本来は、リストラ=リストラクチャリングは、事業再編ということですが、もっぱら人員圧縮、首切りの別名になってしまいました。
この背景にある意識を端的に表しているのが今日の一言です。
<ドラッカーの一言>
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「労働力」に関して言えば、「コストの問題」と考えるのは
根本的な間違いで、「質の問題」として捉える必要があります。
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『ドラッカーの遺言』2005年 講談社
私たちが「労働力」と言う場合、考え方の基本に「単価」×「労働時間」×「人員数」というような算式があります。
いわゆるコスト意識です。
ここからもたらされるのは、「賃金の1割カット」などという「単価」の問題、「サービス残業」という「労働時間」の問題、「早期退職の勧告」という「人員数」の問題などなどです。経営資源の投入量という意味では、いわゆる肉体労働者あるいはブルーカラーを対象にすれば、売上が減った分、投入量を減らせば帳尻は合います。ところが例えば日本の製造業では、20%程度しかブルーカラーはいないといわれており、その他は、ホワイトカラー、ドラッカー教授のいう知識労働者なのです。
このような状況でやみ雲に人員整理などで投入量を減らすとどうなるでしょうか。
投入の「量」の調整の重要性もさることながら、「質」の問題をないがしろにすると産出量/成果に異変が生じます。端的にいうと優秀な人間一人とそうでない人間一人の「成果」の大きさには、大変な差があるのにも関わらず、「コスト問題」という意識が先に立って「成果」をあげる大切な「人財」を活用していなかったり、失ったり、成果をあげない「人罪」ばかりが組織に増えたりといった状況が多数見受けられます。
今日の一言は、こういった状況を憂えたドラッカー教授の「遺言」なのです。
人材の「質」を見抜く目、「質」を高める力を身につけることが重要です。
ドラッカー教授のアドバイスによれば、
(1)知識労働者の昇進の仕組みを整備すること、
(2)個ではなくチームとして機能させること、などです。
経営に一工夫も二工夫も必要な時代になりました。
佐藤 等