企業と政治【経営のヒント 110】
この本は、結論の章を残してこの第6章「企業と政治」で終わりです。
普段あまり意識しない政治的要因と企業のかかわりに関して、とても考えさせられる章です。
今日の一言です。
<ドラッカーの一言>
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あらゆる組織が、自らの卓越性について徹底的に
検討しておかなければならない。能力のない分野
においては、「ノー」という勇気が必要である。
能力を欠くよき意図ほど、無責任なものはない
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1980年 新訳『乱気流時代の経営』(ダイヤモンド社) より
やや前提を整理する必要があります。
まず現代社会は、組織社会になったということです。組織は、本来単一の目的をもって生まれ、それぞれの組織が目的に合った顧客を創造することを期待されます。そのための組織の行動原理は、利益の「最大化」ではなく「最適化」。投資とリスク、成果と機会との間に最適なバランスをとることが求められています。
例えば、ビジネスチャンスをとらえたら利益という成果をある程度犠牲にしてでも、リスクを考慮して投資するという行動(最適化)のことで、貝殻に閉じこもったように何もせずに利益を確保するという行動(最大化)はとらないということです。
ドラッカー教授は、乱気流の一つとして現在社会では政治的期待がさまざまな形で組織にかかっていると言います。例えば、病院は傷病の治療が組織の本来の目的ですが、地域の病気予防という政治的期待をかけられています。それがマネジメントの意思決定を乱すもの、乱気流だというのです。
無視できない政治的期待は、現代社会が多元化した結果です。組織本来の単一目的から離れて、組織を取り巻く関係者からさまざまな期待をかけられるそんな時代です。政治的期待に応える行動原理は、満足化です。しかしすべてを満足させることは不可能です。
そこで今日の一言です。
一つは優先順位の問題。まず組織本来の目的を果たし成果をあげること。
もう一つが政治的期待をよくコントロールして能力のあることだけを行うこと。
多元化した社会では、政治的期待から逃れることはできません。
ドラッカー教授は、次の言葉で本著書を締めくくっています。
すべての企業の「経営管理者たる者は、乱気流の時代においては、自らの組織が成果をあげるようマネジメントするだけでなく、多元社会におけるリーダーは、まとめ役にならなければならない。」
次回は結論の章です。
佐藤 等