ドラッカー教授の『マネジメント』をアップデートした作品『経営の真髄』を読む【経営のヒント 653】
ポラスとの共著を書き上げたとき、書名候補は100を超えた。困った私たちは、いつそ「すべてはドラッカーの言うとおり」にしようかと言った。
『経営の真髄』「ドラッカーが遺したもの」
名著『ビジョナリーカンパニー』誕生に関わる秘話を著者のジム・コリンズが『経営の真髄』の冒頭を飾りました。
今日からメルマガは、ドラッカー教授の『マネジメント』(1973)をアップデートした作品『経営の真髄』から送ります。同書は、1974以降、ドラッカー教授が逝去される2005年までに発表された著作群をリソースとして原著『マネジメント』をジョセフ・A・マチャレロ教授が編集したものです。
ジム・コリンズは、「ドラッカーの影響はなぜ、これほどに大きいのか」と問い、そのアプローチに着目しました。
(1)外の世界を見る
(2)成果を中心に置く
(3)質問する
(4)個を大切にする
これらのアプローチが、ドラッカー思想の原点、「自由で機能する社会の実現」に端を発したものです。自由とは個人に帰属する概念です。「個を大切にする」姿勢の中に、「自由」は人々の幸せにとって欠かせない条件であるとの信念があるからです。
「自由で機能する社会の実現」は、何のために必要かと問われれば、そこで生活する一人ひとりのためとドラッカー教授なら答えるでしょう。
ジム・コリンズも書いたように「自由社会が成立するには、あらゆる分野において、自立した組織が成果をあげなければならない。さもなければ、全体主義にとってかわられる」のです。
ドラッカー教授が社会に出て間もないころ、企業は珍しい存在でした。まだ世の中の主役になるかどうか判別できない頃でした。そのような中でドラッカー教授は、いち早く企業の存在に目をつけ社会が機能するには企業が欠かせない存在であるとの仮説をたて企業と向き合います。こうして生まれた著作が『企業とは何か』(1946)です。
第二次世界大戦後、企業は社会の性格を決める代表的な存在になり、その後、「マネジメント」を体系化しました(『現代の経営』1954)。
ドラッカー教授は、組織は成果をあげるための道具だと規定しました。成果とは、組織の外にあるもの、顧客に起こるプラスの変化です。顧客あっての組織だということです。つまり成果が途絶すると組織の存続は難しく、現代社会では組織が亡くなれば社会の機能が衰え、自由な社会の実現に黄色信号が灯ります。
それゆえ「成果を中心に置く」ことは当然です。個々の組織の成果は、自由な社会の実現に直結しているといえます。
成果は、組織の外にあるものなので「外の世界を見る」ことは、欠かせません。具体的には、組織の成果の具体的な対象者である顧客の価値観、欲求、現実を見ることです。たとえば、コロナ禍において「おうち時間」や「非接触」などの価値観が重視されるようになったことなど、よくその変化を見ることです。
「質問する」ことは、答えは自分や自分の組織にあるのではなく、相手や顧客の中にあるからです。一緒に働く仲間に質問する。顧客に質問する。そこから得られる情報が、新しい活動を生み出し、状況を変えます。社会はこうして進歩してきたのです。
ジム・コリンズが指摘したドラッカー教授の4つのアプローチは、とても興味深い指摘です。これらのアプローチを使うことは、とりもなおさず一人ひとりの幸せの実現に寄与します。ぜひ皆さんもあらためてこれらのアプローチを考え、実践してみて下さい。
メルマガは、この後、しばらく『経営の真髄』からお送りします。同時並行で読み進めていただければ理解が深まると思います。
佐藤等