ドラッカー「経営の真髄」を書いた目的【経営のヒント 655】
今日では、意味ある競争力要因は知識労働者の生産性だけである。その生産性を左右するものは、マネジメントではなく知識労働者自身である。雇用主たる組織のあり方を規定するものは知識労働者である。
『経営の真髄』<上>p.20
これをドラッカー教授は「新しい事態である」と評しました。つまり、組織の命運を握るのは、知識労働者だというのです。こうした新しい事態に応えるためにどうすればよいのかという問題意識から書かれたのが本書です。つまり本書の目的です。
次の象徴的な言葉に表れています。
「読者の一人ひとりをして、自らのマネジメントと他の人のマネジメントに成果をあげていただくことである」
いまや雇用主と被用者という関係を前提にしていたら誤ったマネジメントを行うことになります。これからのマネジメントを考える際の基点となるのは次の点です。
(1)彼らは生産手段を所有し、しかもその生産手段は携帯可能である
(2)彼らは雇用主たる組織よりも長生きである
(3)彼らは高度に専門化されて、はじめて成果をあげることができる
(4)彼らにとってのコニュニティは組織ではなく、自らの専門分野である
同書でアメリカの知識労働者が33%に達し、2020年には日本もそうなると予見しました。昨年、コロナ禍で日本政府は、企業などに70%のテレワークの実現を要請しました。テレワーク化は、まさに生産手段の携帯可能性を証明して見せました。先進国では、まさに今、代表的労働者の姿が変貌しているとえます。
同書を通じて、知識労働者に成果をあげていただくために必要なことを一緒に学んでいきたいと思います。人によっては、これまでのマネジメントの常識を書き換えなければならない事態も予期されます。しばらくお付き合いください。
佐藤等