多角化への誘因【経営のヒント 364】
第56章「多角化への誘因」は今回で終わりです。
まずは今日の一言から。
<ドラッカーの一言>
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単純さと複雑さはともに必要である。
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『マネジメント<下>』p.132 1973年 ダイヤモンド社
前号では、複雑さを招く多角化を安易に選択しないこと、「逃れることのできない多角化」のみに絞り込むことを挙げました。
今日はその続きです。
ドラッカー教授は企業史を引き合いに、適切な多角化と不適切な多角化があるとし、この事実が意味することを「多角化そのものは良くも悪くもないことを意味する」と述べました。
そのことからトップマネジメントの仕事を「自らの強みを生かし、もてる資源から最大限のものを引き出すにはいかなる多角化が必要かを考えること」であるとしました。
多角化の良し悪しではなく、必要かどうかが重要だというわけです。
ドラッカー教授は、そのための問いを2つ用意しました。
「ミッションの実現に向けて目標を達成し、活力をもって繁栄し続けるうえで必要最小限の多角化は何か」
「マネジメントしうる最大限の多角化はどの程度か。耐えることのできる最大限の複雑さはどの程度か」
そして、2つの問いの中間に答えはあるとしました。
単純化と集中の成果、単純さと複雑さのバランス、複雑さに秘められた機会と脅威など、これらを問うことは事業活動の本質を問うことになります。
様々なバランス感覚が要求される多角化という選択。
ポイントは共通の軸によって多角化を一体化することです。
57章のテーマ「多角化の核」とは、共通の軸に他なりません。
共通の軸については次回詳述します。
佐藤 等