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INTERVIEW

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【実践企業紹介】岡山倉敷 美容室BALANCEさま

[実践企業訪問記]

スタッフからのアイデアが止まらないお店・・・美容室BALANCE(岡山県倉敷市)

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(ドラッカー教授の言葉)・・・・・

「私は」ではなく「われわれは」を考える

最終責任は自らにあることを知らなければならない。
最終責任とは、誰とも分担できず、誰にも委譲できないものである。
トップが権威を持ちうるのは、自らのニーズと機会ではなく、組織のニーズと機会を考えるからである。
(経営者の条件p.14)


こんにちは! “実ドラ”講座、実践ナビゲータの清水です。
今回は岡山県は倉敷市に行ってまいりました!
昨年、「実践するドラッカー講座」にご参加頂いた後、
わずか3ヶ月後から毎月前年対比120〜150%というすばらしい業績をあげている、
新倉敷のヘアーサロンBALANCEの才野裕識さんと、
サロンスタッフの皆さんにお話をうかがってきました。
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★★ナレッジワークで、あなたも日常の中にArtを。★★

私(清水)が、BALANCEさんを訪問したのは、今回が実は二度目。
最初にお伺いしたのは、今年(2014年)5月5日。
『Art Festa!in玉島』(※以下“AF玉島”と略す)という才野さん企画のイベントに
単なる一人の参加者として参加させて頂いたときでした。
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実はこのイベント、実ドラ講座を受講していた際の閃きがきっかけだったそうなので、
責任を取って(笑)参加させて頂いた次第です。
ちなみに、その閃いたこととは、
『日常の中のArt』
というコンセプト。
***
知識労働と肉体労働の違いについての話を聞いたときに閃いたもので、
いうなれば、『人が人のためを思って真剣に取り組んだ仕事は、もはや芸術になる。』というものです。
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例えば、勤務先での「今日のお客様、芸術的にカッコイイ髪型に仕上がったよ!」ということだけでなく、
「今月の家計は芸術的にやりくりできた!」という主婦も含めて、
すべての仕事や活動に芸術的な場面があるはず。という趣旨です。
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「きっと芸術って難しいものではなく、誰かを思って、懸命に楽しみながら行っていれば

誰にでも訪れることなんだと思うんです。」

***

このAF玉島(※)は、倉敷市の中でも人口一万人程度の玉島という地域での開催にも関わらず、
家族連れを中心に600名もの参加者が集まる一大イベントとなりました。
イベントでは、岡山市の美容室や、地元倉敷の木工所や乳製品製造業の方たちが加わって
ハンドメイドを体感する個別ブースと、本格的なヘアカットショーを地元で開催するというもので、
子供たちが働くということに夢を持つこと、そして
その子供たちを見た親たちも仕事への活力を取り戻すということがテーマでした。
イベントの最後には、「働くことの楽しさ」や「仕事への誇りを感じるとき」を問うムービーもあり、
楽しみながらも強いメッセージを発するイベントでした。
私は、終了後の参加者が退席する場面での親子や夫婦での会話を、
人ごみに紛れながらうかがって、その想いは十分に伝わった会だったと感じました。

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★★ われわれの成果は何かを問う ★★

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もちろん、そんなイベントなんかにエネルギーを使うなんて・・・。
という声も同業者を中心にあったそうですが、
才野さんのお店は、なんと、この企画をし始めた今年から、
前年対比120%以上の業績を連続して更新中なのです。
そして、このイベントを行った5月は、
このイベントのために営業日数が減ることになったのにも拘らず、
前年対比145%を達成! 驚くべき成果です。
思うにAF玉島(※)というイベントを創りこんでいく過程が、
スタッフの皆さんに大きな成長をもたらしたのではないかと考えています。
社外の皆さんも一緒に企画に加わり、デザインしていく・・
というオペレーションの難しい『混成チーム』での初めての大きな試み。
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そんな中で
チームを一つにした“鍵”は「成果」の定義。
「誰に向けてのイベントなのか。」
「その人たちにどんな変化があったら自分たちは成果をあげたといえるのか。」
という議論を何度も重ねたそうです。
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この問いを何度も繰り返す中で、当初に合意形成されていたかに見えたものは、
具体化されていくにつれて実はそれぞれが思い描いたイメージが違っていたことが判ってきて議論が沸騰し、
一時はその混成チームが崩壊しかかったときもあったそうです(汗)。
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でもそこからまたチームを一つにしたのもこの問いでした。
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そんな議論する中で全員が想像の中でシミュレーションができている状態になり、
当日の様々なハプニングにも関わらず、
一つのものに向かって個々人で判断して動けるような素地が固められていました。
***
スタッフの皆さんにお話をうかがうと・・・・

「作ったことのない、先が見えないことに取り組むと、何をしてよいかわからない状態に陥りました。

 そんなときでも、才野さんの『やってみた方がいいと思わない?』という言葉に励まされ、

 成果を考えて一歩一歩進めていくことができました。

 終わってみると、自分には到底無理だと思っていたことが結局は出来てしまった。

 その時の達成感・自信・喜びにはたまらないものがありました。」

というお言葉。
きっとこれからのサロンを語る大きな一ページになるでしょう。
 

★★ 顧客が買っているものと企業が売っているものは違う ★★

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実ドラ講座では『お客様はドリルではなく、穴を買っている。』これが最も衝撃でした、
と語る才野さん。
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「お客様は髪を切りに来ているわけではない。」
ということがショックでもあり、大きな気づきだったそうです。
才野さんの挫折の物語をうかがうと、その言葉に重みが増します・・。
***
才野さんが独立した頃のこと・・・
技術や創作能力、デザイン性をストイックに高め続け、
自己研鑽の末に独立後5年目には
業界でも権威あるコンテストで地域を代表する存在にまでなった絶頂期。
「知名度もあがったから、これから経営も上向くだろう。」
と思ったのも束の間でした。
***
業績が上向くどころか、スタッフは次々と辞めていき、
とうとう全員が辞めてしまった・・・という挫折を味わったそうです。
「自分を振り返ってみて、自分がやりたいことに夢中で、
スタッフを全く見ていなかったことに気づきました。」
ただひたむきに高い技術とデザイン性を高めていった才野さんが、
経営に関するセミナーに参加するようになったのもこの頃からでした。
 
そうして新たに雇ったスタッフにセミナーで学んだことを伝えていきながら
“全員で”サロンの方向性を最初から考え直すという試行錯誤を繰り返していきました。
実ドラ講座を知ったのも、そんな試行錯誤の中で人の繋がりを経てのことでした。
「実ドラ講座の受講後、
『われわれの顧客は誰か』を絞り込むために女性誌をみんなで手分けして研究しました。
私たちの理想のお客様が読む一冊はどの雑誌なのかで、顧客イメージを明確にしようとしたのです。
写真はそのときのスタッフの皆からあがって来たレポートです。
書式はスタッフそれぞれの個性が現れたもので、ワープロか手書きかの違い、
まとめる項目の違いなどあるものの、スタッフがそれを調べる意味がわかって作成されたこのレポートは、
今では大きな武器になっています。」
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顧客を絞り込んで作られたコンセプトは『バリバリ働き、家事もしっかりこなす女性』。
そんな女性にご褒美の『BALANCE体験(非日常の、癒しとなる、プチセレブ体験)』
を味わってもらうことがサロンの意義となりました。
——-とはいうものの、絞り込んだお客様像の通りにお客様が来店されていますか?
(才野氏) 「実は絞り込んだ通りの客層が来ているわけではないんです(笑)。」
——- 確かに。人口一万程度の地域ですものね。
でも、理想のお客様像を絞り込んだことで、スタッフの皆さんの発想力は高まっていったようですね。
一方、スタッフの方にお話を伺うと、
「この雑誌の研究をした経験がとても役に立っている。」とのお話。
初来店のお客様でも、その方の服装、ファッションを見るだけで、
例えば「あ、JJ系だな」とか「少しLEEっぽい。」という診断ができるようになり、
その雑誌のモデルさんのイメージと共に、その方が求めているヘアスタイルイメージが予測でき、
適確に提案・施術・アドバイスができるようになった。というのです。
また、雑誌の研究は、お客様が求めている情報は何か?を知るためにも役立ち、
お客様との会話も弾むようになったようです。
「みんな不思議がっているんですよー!
来店時アンケートで『静かに過ごしたい』と記入された方なのに、
なぜかずっと楽しくおしゃべりしてくださるんです!」
と、スタッフさん。それ自体が最高のお客様の評価の現れではないかと思います。
実際に、美容室の口コミサイトには
「がつがつ話しかけてこない」
「話しやすいのでつい色々な話をしてしまった」
「私の希望に沿って提案してくれる」
「髪の悩みを話すと丁寧にアドバイスしてもらえた」
という書き込みがあって・・・・“結果として”「切ってよかった」という感想が多数書き込まれています。
(ちなみに、この美容室の口コミサイトではBALANCEさんがトップクラスにランキングされています。)
 
★★ 「私は」ではなく「われわれは」を考える ★★
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才野さんはとても聞き上手な方で、
インタビューをしている私の方がいろいろと話したくなってしまうので、
才野さんが熱く語っている雰囲気ではないのですが、以.下、才野さんのお話です。
 「サロンを作って独立したとき、
  『美容室の厳しい労働条件を変えたい、僕ならやれる。』
  そう思っていました。
 でも、そのための“手段”として
   『田舎でも東京レベルのデザインができるお店』
 と考えた頃から、
   『自分が技術・デザインを高める努力をしさえすれば。』
 という思いが高じて『私は』が中心になっていました。
 
 現在はスタッフと一緒になって作った「BALANCE」の成果の定義に向かって
 共に歩き始めています。
 今は、スタッフの皆が「自分たちの店」だと語ることができるお店になりました。
 それこそが僕が本当に作りたかったお店だと思い出しました。」
全員が「われわれ」を考えて行動するための仕組みを私の見立てでざっとご紹介すると・・
1) 組織と個人のベクトルを合わせる(チーム編 第3章)
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朝礼の場で、皆で決めた「BALANCEとは何か?」
つまり、ミッション、理想の顧客、そして、私たちが提供しているものの定義などを唱和することで、
みんなで目指すもののイメージを一つにすること。
それとともに毎朝、朝礼前にひとり一人が
『今週のワクワク表』というシートに
「この一週間で私が貢献する目標」
「昨日私が活動したこと」
「その成果」
「自分が今日活動すべきこと」
を記入して交換すること。
(このシートも、スタッフの皆さんのアイデアで、元々の記入枠を超えて、記入する項目が変化し、増えていっています。)
 
2 フィードバック情報の開示(チーム編 第4章)
重要なのは、
自分たちの工夫や活動が、本当に成果に結びついていっているのかを考えるための材料
を提供することです。
「おまあ指数(利益とは何か:p.97参照)」にヒントを得て作った、
「き・ま・あ指標(きれい&気持ちいい、またくるよ、ありがとう)をカウントすることで、
アウトプット面の測定指標とするとともに、
そのための努力・活動をカウントする表をインプット面の指標として、
自分たちで管理していっています。
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そのインプット面の管理表がこの『バランス体験表』です。
「施術に入るとき、お客様の名前を必ず呼ぶ」
「必ずお客様の方向を向いて笑顔で挨拶する」
などの項目を2つ程度に絞り込んで、21日連続で皆に○が着いたら、次の項目をまた全員で考えるというものです。
 
また朝礼では、お客様からのちょっとした一言やアンケートからの一言をフィードバックしています。
 
3 チームを活性化させるコミュニケーションと会議運営(チーム編 第6章)
 
スタッフが「自分たちの店」だと語って行動できるようになるためには、
自分の考えが承認され、それを膨らませ、
よりよい物にしてカタチにしていくための場が必要です。
そのためのコミュニケーションの時間や全員で学ぶ時間をしっかりととるために、
平日に営業時間を15時で終わらせる日を設けていらっしゃいます。
「来店客が増えている今(注:前年対比150%に達する勢いです)、
営業時間を短くすることは非常に勇気がいることでしたが、
お店を開けることよりも重要なことだ、と皆で決めました。」
スタッフの皆さんからは、手作りカードやウェルカムボード、アンケートボックスなど
「BALANCEが成果をあげるため」にお店に必要だと思うことについて、
どんどんとアイデアを出して自ら取り組み始めて下さっているのですが、
私が「これを考案したのはあなたですか?」と聞くと、
皆さんが皆さん「いえ、皆で考えてここに至った。」と話してくださるのです。
ちょっとくどいかもしれませんが、誤解がないように申し上げますと、
「皆で考えたものだから、このアイデアがうまくいかなくても自分の責任ではない」
という自己防衛の発言ではなく、
「皆で考えて作ったものだから、うまくいかない部分は誰もが意見を言える。
そうして皆で工夫して良いものに変えていく」
という連帯責任を意識した発言です。
ちなみに、才野さんはお店の細々したことは、スタッフの皆さんを信頼し、
今後の事業展開や、働きやすい場の提供のために自分に何ができるかについて、
しっかりと考える時間がとれるようになったと言います。

4 メンバーを育成する(チーム編 第2章)

この春からは、アシスタントの3人が店舗内の疑似店舗を設けて
「ヘアカットが出来なくても自分たちに貢献できること」
を考えて行動するチームを作ったそうです。
アシスタントの私たちにもできることは何か?を考え、
お客様のお悩みを解決するためのアドバイスと提案をしていくというものです。
お客様に合ったヘアケア商品はもちろん、
自分が資格を持っているネイルやエクステなどで、
アプローチの仕方、企画も含めて自分たちで考え、
その売上にも目標を設定して、
一つの店舗としての経営を考えて行動できるようにしているそうです。
この取り組みも、今後の店舗展開を考える中での次世代の店長養成のため、
そして貢献を考えて行動する習慣をつけるために大きな成果をあげると私(清水)は確信しています。
 
★★ 凡人をして非凡をなさしめるのが組織の目的 ★★
才 野 さ んが 、 ス ト イ ッ ク に 自 分 を 高 め て 来 た 頃 の 自 分 を 振 り 返 っ て 少 し 照 れ な が ら お 話 頂 いたのは・・
「実はあの頃、様々なコンテストに出て、コンテストのレベルが高まっても、
 必ずファイナリストまで残っていたんです。
 でも、最後に破れていました。いつも2位止まりの自分。
 それがなぜなのか当時は判らなかった・・・。
 でも今、スタッフがコンテストにも出るようになって、
 同じような状態になったときにアドバイスをして、やっと気づきました。
 思わずアドバイスしたのは、
 「髪をこうしてやろう。こうしてやるとカッコよくなるはず」
 という自分に向かうベクトルの向きを、お客様へと向けた方がいいよ。
 ただ目の前の人のことを真剣に考えるだけでいいんだよ。
 という言葉でした。あの頃の自分にアドバイスしたいです。」
ひたすらにストイックに芸術性を極め続けた経験を持つ才野さんが、
冒頭の「芸術を極めることって誰にでもできるもの」
という発言をするようになったとき、大きな成果をあげることができました。
(今後、「team BALANCE」はもっともっと高みに行くと思います。)
「いろんなセミナーに出たけれど、こんなにも早くに成果に結び付いたセミナーは初めてでした。」
とおっしゃっていただける謙虚な才野さん。
ありがたいです!
5月にうかがった際、この謙虚さもあってか
才野さんのインタビューだけでは、
“BALANCEの奇跡”を記事にはできませんでした。
(私のインタビュー能力のせいです(泣))
まるで才野さんが皆さんを操っているかの様な記事になってしまい、
才野さんが目指しているものとは全く違う内容になったので全面ボツにしてしまいました。
今回は朝礼にも参加させていただいて、
活き活きと働くスタッフの皆さんにもお話をうかがって初めて
今回の記事となりました。
才野さん、スタッフの皆さん、ご協力ありがとうございました。
最後に一つ、今回おうかがいして感動したことをシェアさせて頂きます。
ちょっとした一工夫だけれど、「顧客目線に立つ」ことを考えさせられたひと工夫・・・・。
ふと見ると、皆さんの名札が「鏡文字」になっていたのです。
私が指摘すると、
「ああ、コレですね。ほとんどのお客様は、施術中には全く気づきませんね。
終わってレジで面と向かった時、初めてそれに気づく方もいらっしゃいますが。」
とスタッフの方。
コレに対して私は思います。
きっと・・・ほとんどの方が口にはしないだけで
『このお店は、お客様の目線で真剣に考えてくれているお店なんだ。』
と感動してくださっているはずです!ありがとうございました!
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