知識の生産性を高める一つの方法【経営のヒント 679】
50年に及ぶ職業人生活は、一種類の仕事にとっては長すぎる。
『経営の真髄』<上>p.86
若年人口の減少の他にも、まったく新しい現象があります。組織の短命化と職業人生の長期化という新しい現実がそれです。
30年以上継続する組織はほんの少数です。しかし、知識労働者の職業人生は、50年は続きます。つまり、転職を前提に人生を組み立てざるを得ないのです。
ドラッカー教授は、1969年に出版した『断絶の時代』で早くもこのことを指摘し、「第二の人生」の必要性を明確に示していました。助走期間、つまり準備は40代早々に開始しなければならないと指摘していたのです。最初の知識労働者たちは、その身をよく理解しなかったかもしれません。なぜなら肉体労働が中心の時代では、組織の寿命の方が就業寿命を上回っていたからです。
知識労働者が世に生まれて60年以上経つ今は、誰でもその意味を理解できます。準備が重要です。知識労働とは何か。知識労働の生産性とは何か。知識とは何か。知識の生産性とは何か。どれも知識社会を生き抜くために必須のコンセプトです。これらの理解なしに50年を幸福に生き抜くことは、至難の業です。
しかし、残念ながらそのような科目はどこにも存在しません。実学だからです。実学とは、仕事をしながら身につけるしか方法がないことを意味します。ドラッカー教授の著作に中には、知識に関する記述がちりばめられています。読みながら仕事をし、また読むというフィードバックの繰り返しが、知識の生産性を高める一つの方法です。ナレッジプラザが行う「実践するマネジメント読書会®」は、そのような場です。継続して参加することでしか身につけることができないものを実感することができます。
佐藤 等(ドラッカー学会理事)