新しい企業のコンセプトの出現【経営のヒント 687】
1970年頃まで通用した5つの常識の変化について述べてきましたが、これらの常識が変化したことで何か変わり、どのような影響をもたらしているかを見ていきたいと思います。
今日のテーマは、「第三に、事業は、必要とされるあらゆる活動を同一のマネジメントの傘下に置くことによって、最もよくマネジメントされるとされた」についてです。
かつて、すべてを傘下に置くことが有効であると考えた時期がありました。しかし常識は反転しました。事業に関する知識が、専門化、高度化したためすべての活動を内部で行うには費用がかかりすぎるからです。
かつては、組織の所有権を取得し、一つの傘の下で事業を行ってきました。また、事業プロセスの中核部分に資源を集中し、他の分はアウトソーシングする企業が出現してきました。
旧来の企業のコンセプトにはまったく従わないものが現れている。
『経営の真髄』上巻p.101
さらに今日では、異業種のシンジケートなど従来には存在しなかった事業構造を有する組織が出現してきました。たとえば、プラント輸出などのように中堅企業が新興国や途上国の市場に進出する際には、メンバーが出資して、現地の工場で組み立て、流通やアフターフォローも担う独立したシンジケートのような存在も稀ではありません。各企業がもっているものをもちより、マネジメントは統合するという考えです。新しい企業のコンセプトが出現しているということです。
このような発想は、中小企業でも応用可能です。すなわち一つの目的を実現するために必要な事業プロセスを構築し、役割を分担して、事業を営むことは可能です。一つの大きな傘の中に組織が連なる時代から、傘から出て、目的に応じて離合集散を繰り返す時代といえるでしょう。
このような時代においては、プロジェクトベースで事業をマネジメントする能力が求められています。誰と組めば、目的を実現し、より長く、太い事業プロセスを構築できるかを問うことから始まります。
佐藤 等(ドラッカー学会理事)