事業の定義の3つの要素【経営のヒント 703】
「人間のつくるものに、永遠のものはない。とくに今日では長く生き続けるものはほとんどない」
『経営の真髄』<上>p.156
事業を定義する際、前提となる3つの要素を挙げました。
(1)事業の定義の要素は3つあります。第一に、組織のミッションにしたがっている事業であること、第二に、自社の強みを基盤としていること、第三に、経営環境に適合していることです。
ドラッカー教授は、これに3つを加えて「事業の定義を有効にするための4つの条件」と呼びました。
(2)3つの前提は、それぞれ互いに合致しなければならない。
(3)事業の定義は、組織全体に周知徹底させなければならない。
(4)事業の定義は、常に検証していかなければならない。
(4)について「人間のつくるものに、永遠のものはない」といいます。事業の定義も例外ではありません。「やがて陳腐化し効力を失う」ときがきます。
やっかいなのは、「事業の定義が陳腐化してきたとき、組織の反応は防衛的」になることです。「現実を直視せず、何ごとも生じていないように振る舞う」のです。
私たちが注視しなければならないのは、事業の定義の陳腐化の兆候です。確認すべきは、(1)のミッション、自社の強み(コアコンピタンス)、経営環境という3つの要素です。
これらをモニタリングし検証することで事業の定義の陳腐化を予防しなければなりません。新しい現実を反映させ、獲得すべき新しい強みを明確にし、組織の行動を変えていきます。ときにミッションの定義の見直しですら必要かもしれません。
基本は事業の定義の3つの要素です。常に基本に戻り、確認する姿勢が求められています。
佐藤 等(ドラッカー学会理事)