「目標」の目的は、意図を行動にかえるため資源と行動を集中すること【経営のヒント 714】
「事業の定義は、具体的な目標にする必要がある」
『経営の真髄』<上>p.182
「われわれの事業は何か」、つまり事業を定義することはきわめて重要ですが、それは意図の表明に過ぎません。つまりどんな顧客にどんな価値を届けるのかを掲げただけで、何も起こらないということです。
「目標」の目的は、意図を行動にかえるため資源と行動を集中することにあります。そのためには事業の定義(「われわれの事業は何になるか、何であるべきか」を含む)から導き出された成果の評価基準となる具体性を備えてなければなりません。また目標は、設定すべきすべての領域をカバーするものでなければなりません。
すべての領域とは、次の八つの領域です。
(1) マーケティングの目標
(2) イノベーションの目標
(3) 生産性の目標
(4) 生産要素である「ひと」の獲得と活用に関する目標
(5) 生産要素である「もの」の獲得と活用に関する目標
(6) 生産要素である「かね」の獲得と活用に関する目標
(7) 社会的な責任
(8) 条件としての利益
(8)の「利益」についてドラッカー教授は、利益は目的ではなくリスクに備える未来のコストであるととらえています。「条件」は「目標」よりも基準が厳しいと理解しておきましょう。
目標は方向づけの道具です。自ら設定するものです。命令からくるのではなく、資源とエネルギーをその「的」にめがけて集中するものです。それゆえ自己決定が絶対条件となります。目標は、使いなれた道具かもしれませんが、ちゃんと使っている組織は意外と少ないのかもしれません。
佐藤 等(ドラッカー学会共同代表理事)