「立志」が人間的成長を推進する【経営のヒント 645】
<マネジメントと人間力>というテーマでお伝えして半年が経とうとしています。この連載は、次の言葉から始まりました。
「マネジメントとは、科学であるとともに同時に人間学である。客観的な体系であるとともに、信条と経験の体系である」
『マネジメント<上>』p.38
今回から少しモードを変えて、人間学の領域に含められる主要なコンセプトに焦点を当て書いてみたいと思います。
「立志」。志を立てる。人間学における代表的なコンセプトです。
志を立てるのは、目的ではなく手段です。
では何のために志を立てるのか。
その目的は、前々回のメルマガで示した「賜生(しせい)」という言葉に象徴的に示されています。具体的には、「天から賜った自分という人格を成熟させる」ためということです。
立志とは、理想的な姿の具現化でもあります。理想を明確に定めることで、そこに向かうエネルギーが生じます。高ければ高いほど、大きければ大きいほど、生じるエネルギーは多いといえましょう。その意味で立志は、自己成長と密接不可分の関係にあるといえます。
自らを成果をあげる存在にできるのは、自らだけである。(中略)したがってまず果たすべき責任は、自らのために最高のものを引き出すことである。
『非営利組織の経営』
立志とは、最高のものを引き出す有力な方法だともいえます。しかもそれは、「自らのため」だということです。前々回のメルマガでお伝えしたドラッカー教授の完全を求めて仕事をする習慣も理想的な姿を追求する一つの方法です。その他にも私淑する人物をもつという方法もあります。私淑とは、面識がなくとも師匠として尊敬し、一歩でもその人の生き方に近づこうとする姿勢です。
理想的なものを追い求めるエネルギーが人間的成長を推進させます。年末年始、あらためて自らの理想的なことや人物を定めてみてはいかがでしょうか。
佐藤 等(ドラッカー学会理事)