丸ごとドラッカー特集【経営のヒント 29】
今月のハーバード・ビジネス・レビューという雑誌の11月号は、丸ごとドラッカー特集です。ドラッカリアンとしては、嬉しい限りです(^^)。さて今日から『イノベーションと起業家精神』の本論に入ります。序章は、「起業家経済」というタイトルです。おそらくほとんどの方は、はじめて聞いたのではないでしょうか?これはかなり特殊な言葉です。
時は1965年~1985の20年間、場所はアメリカで起こった出来事です。アメリカでは、この20年間に就業人口が71百万人から1億60百万人へと50%以上も増えました。しかしこの間1973年のオイルショックに始まった、エネルギー危機と煙突産業の崩壊は、2度の不況の時代招きました。80年代初めまでゼロ成長、不況と衰退、脱工業化などアメリカが自身を喪失していた時代です。しかしこの間他の国では、せいぜい10%程度の雇用増をみただけでしたが、ふたを開けてみるとアメリカだけが違う様相となっていました。数千という雇用増をだれが吸収したか?この観点からドラッカーは、世の中を見ていました。その洞察力ただ者ではありません。
答えは、ローテク中小企業者です。大企業は、せいぜい数百万人の雇用を生んだに過ぎないと言いますから、いかにすさまじい吸収力かがわかります。不況と失業に悩む日本政府が今必死に行っているベンチャー創出という政策のモデルは、ここにあります。
<ドラッカーの一言>
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アメリカ社会を起業家経済たらしめたのは、(科学や発明
ではなく)このマネジメントという名の「技術」である。
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新訳『イノベーションと起業家精神-その原理と方法-』(ダイヤモンド社)より
その成功要因は、中小企業者を含めてマネジメントという「技術」を用いたからだと結論付けています。さらにアメリカにおいて起きたことを分析すると「イノベーションと起業家精神」に関わるマネジメントは、原理と方法という形で体系化できるとしています。要するにローテク企業・非テクノロジー企業でも、アメリカ以外の国でもイノベーションを起こす原理と方法があるということです。本書はこれを体系まとめた実践の書です。目からうろこが何枚も落ちます。
佐藤 等