イノベーションのマネジメント【経営のヒント 383】
今日も『マネジメント』の第61章「イノベーションのマネジメント」からです。
前回のイノベーションを行う組織の6つの共通点から―「4)イノベーションの目標と基準をもっている」についてです。
<ドラッカーの一言>
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
イノベーションを行う組織は、イノベーションのための
目標と基準をもっている。
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
『マネジメント<下>』p.281 1973年 ダイヤモンド社
「イノベーションのための活動に対し、既存の事業のための基準、
特に会計上のルールを適用することは間違いである」とドラッカー教授は、記述を始めました。
既存の事業には収益基盤があり、コストを負担する能力があります。
これに対してイノベーションは、収益をあげるまでのリード・タイムがあり、コストを負担する能力は脆弱です。
教授は、このことを「ハイキングに出かける六歳の子供に、
五〇キロの荷物を背負わせるようなものである」と例えました。
そのようなスタンスはイノベーションの活動をゆがめ、イノベーションを疎外する体質を生み出します。
このような観点から教授は「既存の事業のための予算とイノベーションのための予算は、
別途に、しかも別の観点から編成しなければならない」と指摘しました。
既存の予算を考える際の第一の問いは「この活動は必要か」であり、
YESであれば、はじめて「必要最小限の支援はどれか」と考えます。
これに対して、イノベーションの予算を考える際の第一の問いは、「これは正しい機会か」です。
YESであれば、「支援は最大限どれだけ可能か」となります。
既存の事業とは真逆の基準です。
イノベーションのための活動を既存の事業活動と切り離すことではじめて、
「機会」「リスク」「コスト」の大きさを評価することが可能となります。
イノベーションの活動においては「機会」「リスク」がより重要な要素となるからです。
これらの基準があってはじめて中止の決定、成果をあげない研究の廃棄などの判断が可能となります。
単なる期待だけでイノベーションを進めてはならないということです。
既存の活動とイノベーションの活動の違いを意識的にとらえ、思考習慣の修正を図りましょう。
佐藤 等