ホーム経営のヒント「成果を上げる5つの習慣的な能力」「7つの習慣」「フランクリンの13の徳目」【経営のヒント 635】

経営のヒント

HINT

経営のヒント

「成果を上げる5つの習慣的な能力」「7つの習慣」「フランクリンの13の徳目」【経営のヒント 635】

<マネジメントと人間力>をテーマに綴っています。復習になりますが、社会人に必要なものとして伊與田先生は、<知識、技術、習慣、道徳>を挙げ、前二者を末学、後二者を本学に分けました。

ここ数回は、「習慣」に焦点を当ててドラッカー教授の成果をあげる習慣的能力、コビー博士の「7つの習慣」、ベンジャミン・フランクリンの13の徳目をみてきました。

<ドラッカー教授の成果をあげるための習慣的能力>
A.時間を管理する
B.貢献に焦点をあてる
C.自分の強みを生かす(人の強みを生かす)
D.重要なことに集中する
E.成果のあがる意思決定をする

<コビー博士の7つの習慣>
1 主体的であること
2 終わりを思い描くことから始める
3 最優先事項を優先する
4 相互依存のパラダイム
5 まず理解に徹し、そして理解される
6 シナジーを創り出す
7 刃を研ぐ

<フランクリンの13の徳目>
ア.節制:頭や体が鈍くなるほど食べないこと。はめをはずすほどお酒を飲まないこと。
イ.沈黙:他人あるいは自分に利益にならないことは話さないこと。よけいな無駄話はしないこと。
ウ.規律:自分の持ち物はすべて置き場所を決めておくこと。仕事は、それぞれ時間を決めて行うこと。
エ.決断:なすべきことをやろうと決心すること。決心したことは、必ずやり遂げること。
オ.節約:他人や自分に役立つことにのみお金を使うこと。すなわち無駄遣いはしないこと。
カ.勤勉:時間を無駄にしないこと。いつも有益なことに時間を使うこと。無益な行動をすべてやめること。
キ.誠実:だまして人に害を与えないこと。清く正しく思考すること。口にする言葉も、また同じ。
ク.正義:不正なことを行い、あるいは、自分の義務であることをやらないで、他人に損害を与えないこと。
ケ.中庸:何事も極端でないこと。たとえ相手に不正を受け激怒するに値すると思っても、がまんしたほうがよいときはがまんすること。
コ.清潔:身体、衣服、住居を不潔にしないこと。
サ.冷静:つまらないこと、ありがちな事故、避けられない事故などに心を取り乱さないこと。
シ.純潔:性的営みは、健康のためか、子供を作るためにのみすること。性におぼれ、なまけものになったり、自分や他人の平和な生活を乱したり、信用をなくしたりしないこと。
ス.謙譲:イエスおよびソクラテスを見習うこと。

 

<知識、技術、習慣、道徳>という観点から見るとずいぶんと違いがあるように見えます。<ドラッカー教授の成果をあげるための習慣的能力>は、「習慣的能力」というように知識、技能に近く、<フランクリンの十三徳>は、道徳に近いことがわかります。

 

その中間にあるのがコビー博士の「7つの習慣」です。7つの習慣は、現代にあって個性主義から人格主義を取り戻すためのフレームワークです。具体的に7つは下記のホームページにあるように、ある構造をもっています。

https://www.franklincovey.co.jp/training/s_7habits/

7つの習慣は、「依存」→「自立」→「相互依存」という成長過程に位置づけられます。これこそがコビー博士が個性主義から人格主義にパラダイムシフト(世界観を転換)するために描いた戦略です。

コビー博士は言います。「私たちの社会は相互依存で成り立っているのだから、自立という土台の上に、相互依存の能力を身につけなくてはならない」。

「依存」は、他者を必要とする「あなた」という世界観の中にいることを意味します。「自立」は「私」という世界観です。さらに「相互依存」の世界観は「私たち」です。

アメリカ建国から150年、人々は人格主義を基礎として生きてきました。150年目は1926年です。この頃、世界は本格的な産業化の緒につきました。つまり人々は、人と共に働き成果をあげる必要に迫られたのです。

この時期に隆盛したのが個性主義です。コビー博士は「成功は、個性、社会的イメージ、態度・行動、スキル、テクニックなどによって人間関係を円滑にすることから生まれる」と指摘し、このようなものだけに頼ることは、一生、試験を一夜漬けしのぎ続けるようなものであると断じました。

必要なのは人格の上に発揮される個性です。産業化によって人々は、「組織に使われている」という言葉に象徴されるように「組織」に依存するようなったのではないでしょうか。このような状態で「依存」から逃れようと個性主義に走り、人格という土台を忘れ去った…というのが現在位置かもしれません。そう考えると私たちが最も変えなければならない習慣は、「依存」からの脱出、つまり自立です。

ドラッカー教授の次の言葉は、自分のニーズと組織のニーズを等距離におく姿勢を示しています。つまり「自立」です。それは自分の人生の中に組織を道具として位置づけるということです。

エグゼクティブの成果をあげる能力によってのみ、現代社会は二つのニーズ、すなわち個人からの貢献を得るという組織のニーズと、自らの目的の達成のための道具として組織をつかうという個人のニーズを調和させることができる。したがってまさにエグゼクティブは成果をあげる能力を修得しなければならない。

『経営者の条件』

 

組織との距離、コロナ禍は大切なことを考える良い機会です。

 

佐藤 等(ドラッカー学会理事)

関連記事