コンセプト化【経営のヒント 392】
ドラッカー教授の偉業は数々ありますが、その原点にあるものがコンセプト化です。
<ドラッカーの一言>
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私が得意とするものはコンセプトのほうだった。
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『傍観者の時代』新版への序文p.5 1979年 ダイヤモンド社
ドラッカー教授は多様化する社会から次々にコンセプトを生み出し、
あるいはコンセプトの再定義を行いました。
ドラッカー教授は、「個人を取り上げることがあっても、それはコンセプトを明らかにするためだった」と、
一人ひとりへの関心を横においてコンセプト化を行った過去を振り返りました。
そして、ついに『傍観者の時代』で、一人ひとりに焦点を当てた著書を世に送り出しました。
ドラッカー教授は、「本書こそ、ついに私が書きたくて書いた本だった」とそのことを振り返りました。
ここでは本論に入る前に本書では扱わなかった「コンセプト」について振り返っておきます。
コンセプト化とは、ある事象、現象という現実に名前を付ける行為です。
目の前に名のない現実があり、それに名前をつけるのです。
ドラッカー教授が行ったコンセプト化で最大のものは、「マネジメント」の再定義です。
それまでマネジメントは、現場管理の延長線を出るものではありませんでした。
それを私たちがマネジメントと呼ぶレベルものとして定義し直しました。
シアーズやIBMなどうまくいっている企業やGMのアルフレッド・スローンなどの
成果をあげている経営者を観察し、際立った成果をあげた存在を見つけ、
それらの成果がどんな卓越性によって生まれているのかを明らかにし、体系化しました。
その過程でさらに、多くのコンセプトが生まれました。
たとえばマーケティングの再定義はあまり知られていない事実です。
それまでマーケティングとは販売を意味するものでした。
「マーケティングとは販売を不要にする行為である」と、正反対のことを述べたのです。
目標管理、知識労働者、民営化、顧客第一主義などコンセプト化され、
現在まで多大な影響を与えているものが多数あります。
コンセプト化は、まずこれまでと違う現実を発見する能力からスタートします。
ドラッカー教授はその能力に特異的に優れていました。
違いが見えるからこそ名前をつけられる(コンセプト化)のです。
教授はその能力をいかんなく発揮し、ヒトラーが政権をとること、
ヒトラーとスターリンが手を結ぶこと、
ソ連が崩壊することなどを次々に予見しました。
本書『傍観者の時代』(ADVENTURES OF A BYSTANDER)は、
いわば「見える人」ドラッカーが人を通して時代を観、
何かを伝えるための一冊なのです。
佐藤 等