傍観者の時代【経営のヒント 393】
先月からメルマガは『傍観者の時代』というドラッカー教授の半自伝といわれている
著書を題材にお伝えしています。
教授の思考法を学ぶという観点でお読みいただけたら幸いです。
<ドラッカーの一言>
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社会とは、多様な個と、
彼らの物語からなるものである
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『傍観者の時代』序文p.4 1979年 ダイヤモンド社
ドラッカー教授お得意の手法に「物語」を用いることがあります。
「シアーズ物語」「フォード物語」「IBM物語」など教授の著作を彩った物語は多数あります。
物語を通して伝えようとしたものは一企業の物語ですが、基本的にはすべて人の振る舞いに関わるものです。
企業も社会も「多様な個と彼らの物語」ということができます。
ドラッカー教授は、本書を1979年に書いた目的を二つの世界大戦の間のヨーロッパとアメリカの時代について
「私自身の子供、学生、若い友人たちにとっては、それらの日々が、急速に、古代アッシリアの都や
神々のように、理解しがたいものになりつつあることを感じた」からだとしました。
確かに私たちにとっての戦前は、古代の歴史と変わらないのかもしれません。
教授は、20世紀初めの歴史、伝記、データなどが不足しているのではなく、
これらを基礎とした社会科学では「時代の本質と意味」を伝えることはできないと断じました。
時代の本質と意味を伝えられるのは、人を描くことによってのみであると明言しました。
本書『傍観者の時代』は、二つの大戦の本質と意味を私たちに伝えています。
二つの大戦は、ドラッカー教授の生涯のテーマである「機能する社会」の実現というモチーフの土壌です。
私も『実践するドラッカー』シリーズの[事業編]と[利益とは何か]で「物語」を用いました。
理由は、物語がことの本質と意味を伝える重要な手段になると考えたからです。
「ストーリーで伝える○○」のような本が増えている理由がここにあります。
教授は、前回のメルマガ書いた「コンセプト」と「物語」を駆使して
私たちに多くの本質を伝えようとしたのです。
教授は、「物語」という現実をコンセプトに濃縮して伝えました。
私たちは、教授のコンセプトという濃縮ジュースを薄めて飲むことで、実践を行うことができるのです。
それぞれの実践は、新たな物語を生み出します。
実践することは、多様な個による新たな物語を生み出すことに他ならないのです。
佐藤 等