ホーム経営のヒント「プロの経営者、アルフレッド・スローン」【経営のヒント 425】

経営のヒント

HINT

経営のヒント

「プロの経営者、アルフレッド・スローン」【経営のヒント 425】

今日も『傍観者の時代』の第14章「プロの経営者、アルフレッド・スローン」、12回目です。
では今日の一言です。

<ドラッカーの一言>
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
ウィルソンは、「私の仕事」コンテストをGM在職中
の最大の成果として自負した。
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
『傍観者の時代』p.328 1979年 ダイヤモンド社

「アメリカでは肉体労働者の生産性を上げ、所得を上げ、
中流階級にすることに成功しました。
これからは生産性だけでなく、働き甲斐についても取り組まなければなりませんね」。
こう話したのは前回も登場したチャールズ・E・ウィルソンです。
彼は、仕事と職場コミュニティに関心をもっていました。

そんなウィルソンが、第二次世界大戦が終わるや否や、
一つのプロジェクトを立ち上げました。

「彼らにとって何が大事かは明らかでしょう。
しかし、勝手に推測するのではなく実際に調べてみようと思うんです」。
こうして「私の仕事-気に入っている理由」という論文コンテストが始まりました。

結果は衝撃的でした。

実にGMで働く者の三分の二にあたる20万人が小論文を提出したというのです。
結果は、フレデリック・ハーツバーグなどの産業心理学者の主張どおりとなりました。

すなわち、ハーツバーグが衛生要因と名付けた賃金や昇進などの労働への対価は、
働き甲斐に通じるものではないことが明らかになりました。
賃金や昇進の不十分さはマイナスに働くものの、
それほどプラスの要因としては働かないということです。
プラスの動機づけの要因として明らかになったものは、成果、貢献、責任でした。
のちにドラッカー教授が人のマネジメントの中核においたものが
この時、証明されていたのです。
働く者は仕事に満足を見出そうとし、能力を発揮できないことに不満をもつのです。

ウィルソンはこの成果を在職中最大のものと自負しました。

…実はこの話には落ちがついています。

審査員は数千本の論文にしか目を通せなかったのです。
20万本の論文など、誰も読むことはできなかったのです。
史上最高の貴重な資料はお蔵入りとなりました。

筆者が気になるのはコンテスト用に用意した賞品の行方です…。

佐藤 等

ドラッカー教授

佐藤 等

<実践するマネジメント読書会®>創始者。『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズ5冊の著者。ドラッカー学会理事。マネジメント会計を提唱するアウル税理士法人代表/公認会計士・税理士。ナレッジプラザ創設メンバーにして、ビジネス塾・塾長。Dサポート㈱代表取締役会長。
ドラッカー教授の教えを広めるため、各地でドラッカーの著作を用いた読書会を開催している。公認ファシリテーターの育成にも尽力し、全国に100名以上のファシリテーターを送り出した。誰もが成果をあげながら生き生きと生きることができる世の中を実現するため、全国に読書会を設置するため活動中。
編著『実践するドラッカー』(ダイヤモンド社)シリーズは、20万部のベストセラー。他に日経BP社から『ドラッカーを読んだら会社が変わった』がある。 2019年12月『ドラッカー教授 組織づくりの原理原則』を出版。 雑誌『致知』に「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」連載投稿中

関連記事