「プロの経営者、アルフレッド・スローン」【経営のヒント 426】
今日も『傍観者の時代』の13回目です。
第14章「プロの経営者、アルフレッド・スローン」です。
では、今日の一言です。
<ドラッカーの一言>
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ついにそれらの年金基金は、アメリカの従業員を
資本家に変えた。
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『傍観者の時代』p.330 1979年 ダイヤモンド社
前回記述したようにウィルソンが行ったコンテストは大成功を収めました。
ウィルソンの考えることは、とどまるところを知りません。
なんとドラッカー教授を「従業員関係担当副社長」のポストに就けようと動き、
スローンに新設を認めさせました。
しかしこの計画は、ウィルソンが国防長官に就任したこともあり、
日の目を見ませんでした。
ドラッカー教授がウィルソンに初めて会ったとき、
彼は教授に「利益分配制度をどう思いますか」と聞きました。
教授は「考えはよいが、従業員全員にとって意味のある額にはなかなかなりません。
給与や賃金の一割程度がせいぜいでしょう」と答えました。
「ときにはバカにされたような気になる額のこともあるし、利益が減ればだまされた気にもなる」と。
これに対してウィルソンが考えたのが年金の積み立てに使うというプランでした。
のちのGM破綻の遠因となる企業年金構想がスタートしました。
例によって組合が要求してくるまで待つ作戦です。
1950年、ついにその時がやってきました。
ドラッカー教授は経営コストを上昇させ、労働力の流動性を阻害すると反対意見を表明しました。
さらにこんな指摘もしました。
「25年もすれば、彼ら普通の授業員が、企業の株主になってしまう」と。
この指摘こそは、今日の一言の真意です。
同年代に書かれた『見えざる革命』(1976)では、
高齢化社会と年金基金が大資本家になることを大テーマとして論じました。
ドラッカー教授は、ウィルソンを「かつての鋳型工組合の専従、
ユージン・デブス門下の社会主義者、GMの社長、第一級の資本家」と
半ば皮肉を込めて呼びました。
そして従業員を資本家に変えることが、彼がずっと夢に描いていたことではないかと
思うと振り返りました。
企業年金基金を取り巻く問題は、時代を超えて現在も大問題となっています。
その根底には高齢化社会という構造変化があることは見逃してはなりません。
反対意見の表明など教授の未来を見据える慧眼にはいつもながら驚かされます。
佐藤 等