マネジメントの主体者が組織から一人ひとりにシフトしてきた時代【経営のヒント 681】
第二に、従業員のほとんどがフルタイムで働く者とされた。
『経営の真髄』<上>p.90
それゆえ当然のことながら、一カ所からの収入で生計は賄われていました。ところがこの考え方が逆転しています。
現在でもフルタイムで働いている人は多数派でしょう。しかしパートタイムで働く人は、世界的に増えてきています。しかもその形態が多様化しています。
パートタイマー、アルバイト、契約社員、期間雇用社員など、フルタイムかパートタイムかでは区分しきれないほど多様化しています。なかには、アウトソーシング先の従業員や派遣社員など、所属が他の企業である場合まであります。
雇用形態が多様化する中、難しいのはマネジメントの問題です。たとえば、派遣社員は、どこの企業のミッションにしたがって働けばいいのかといった現実的な問題に直面しています。
さらに最近の日本では、副業が解禁され、実際に適応している大企業も増えています。もはや「従業員を管理する」という姿勢では、十分でないのです。自らをマネジメントするという姿勢を養わなければ、個人も組織もその力を十全に引き出すことはできないでしょう。
自分の人生の中に仕事を位置づけ、社会的道具としての組織の使い方に習熟していかなければなりません。そのうえで安定と挑戦を繰り返し、自分の収入源を多様化していくという生き方も大切になってきました。
マネジメントの主体者が組織から一人ひとりにシフトしてきた時代です。組織に使われるのではなく、自ら使う。まずは、自分から始めるという覚悟からはじめたいものです。
佐藤 等(ドラッカー学会理事)