何を残して何を外に出すのか【経営のヒント 682】
第三に、事業は、必要とされるあらゆる活動を同一のマネジメントの傘下に置くことによって、最もよくマネジメントされるとされた。
『経営の真髄』<上>p.90
すべてを傘下に置くことが有効であると考えた時期がありました。しかし常識は反転しました。事業に関する知識が、専門化、高度化したためすべての活動を内部で行うには費用がかかりすぎるからです。
しかもこれらの知識の陳腐化スピードは年々早くなっています。維持コストが加速度的に増えるということです。これが知識社会の特徴です。
一方知識社会においては、IT技術の進展により、コミュニケーション・コストが年々低くなっています。このような状況では、すべてを傘下に置く内部化、あるいは統合化は、高コストとなります。20世紀末には、アウトソーシングという考え方が急速に広まりました。
何を残して何を外に出すのか。この問いが重要な時代となっています。わが社の中核的な能力は何かが問われているのです。それは、同時にどの領域において知識の卓越性を高めるのかを決めることでもあります。一度、立ち止まって考えたい重要な問いです。
佐藤 等(ドラッカー学会理事)