『傍観者の時代』【経営のヒント 444】
今日のメルマガで長い15章を終えて『傍観者の時代』も最終回となります。
<ドラッカーの一言>
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
私たちは大変な時代に生きています。
!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!☆!
『傍観者の時代』p.377 1979年 ダイヤモンド社
「しかし、みなさんのご先祖は、ヨーロッパの絶え間ない戦争、憎しみ、虚栄から逃れて
この地にやって来ました。国の名誉という不正と愚行、軍の栄光という政府の専横には与しない
自由の人として生きるために、冬のみぞれと夏の砂嵐の中で荒野を耕してこられました」。
ドラッカー教授は、
ミネアポリス最大のルター派教会の日曜礼拝場にいて牧師の言葉を聞いていました。
牧師は続けます。
「みなさんのご先祖は、人に従うのではなく、
法に従う新しい国をつくるためにこの国に来ました。
私たちが、今日のこの苦しみを乗り越え、
アメリカが、最後にして最良の希望の地であり続け、
空しい帝国のリストの末席に加わることのないよう、祈りましょう」。
「アメリカの夢をこれほど簡潔、明快、感動的に話してくれた人は、
後にも先にも一人もいなかった」―ドラッカー教授は感動します。
当時のアメリカは国際主義者と孤立主義者の対立で国がまた裂き状態ありました。
ドラッカー教授は、その状態を「アメリカの生存を危うくしかねない」、
と教会を出てミネアポリスの空港に向かう車の中でそんなことを考えていました。
空港を飛び立ち30分ほどしてから
「座席のイヤホンでラジオのニュースをお聞きください」
と機長の興奮気味のアナウンスがありました。
ニュースは真珠湾への日本軍の攻撃を伝えていました。
空港に着いた教授を迎えたものは銃剣を装着した警備兵の姿でした。
その姿を見て「お人好しの時代は終わった」と悟りました。
渡米直後に感じた「アメリカ特有の人の好さと行動力」が失われたと感じた瞬間でした。
開戦から7~8週間後、仕事に就くためドラッカー教授はワシントンにいました。
この著作は日米開戦で幕を閉じます。
アメリカは心を決め国際主義の道、すなわち大国の道を歩み始めたのです。
ドラッカー教授は一時代の変わり目を目撃しました。
その後、世界は米ソ二大大国の時代を迎えました。
教授は『新しい現実』(1989)でソ連崩壊を言い当て、冷戦の時代は終結しました。
ドラッカー教授亡き後、中国が大国として急速にその姿を世界に現し始めました。
本書を題材にしたメルマガはこれでおしまいです。
ドラッカー教授がもっていた傍観者の眼は、主として第二世界大戦前の時代を切り取り、
感性を交えながら描写しました。
教授亡き後、世界を見る眼を私たち一人ひとりが鍛えていかなければなりません。
メルマガはまだまだ続きます。
次回をお楽しみに。
佐藤 等