連携によって調達する時代【経営のヒント 689】
1970年頃まで通用した5つの常識の変化について述べてきましたが、これらの常識が変化したことで何か変わり、どのような影響をもたらしているかを見ています。今日は、五つ目です。
「第四に、あらゆる技術がそれぞれの産業に属し、逆にあらゆる産業がそれぞれに特有の技術を持つとされた」。しかし今日では、「独自の技術というものがありえなくなった」。
先週、ホンダとソニーが合弁会社を電気自動車の共同開発、販売などを目的に合弁会社を作るという報道がありました。
130年の歴史をもつ車産業は様変わりしました。要因は技術的なものです。内燃機関(エンジン)からモーターへと駆動メカニズムが変化しました。電気自動車のアイデアは、古くからありましたが、車に搭載する蓄電池(バッテリー)の性能の向上という技術要因によって実現しました。今やバッテリーの性能が車の価格と機能性を決定づけているといっても過言ではありません。つまり現代では、モーターメーカーやバッテリーメーカーとの連携の成否が車メーカーの生命線となっています。
さらにホンダがソニーと連携したように、IT企業といかに組むかは、重要な戦略事項となっています。カメラやセンサー、コンテンツなど急速に車に必要なモノやコトになっています。
「企業形態が独立企業のシンジケートにまで進むことから、権限と責任を持つ独立した機関としてのトップマネジメントの構築が必要となる」
『経営の真髄』<上>p.102
ホンダとソニーは合弁会社をつくることに合意しました。それは、独立した企業です。そこには、ホンダでもなく、ソニーでもない独立の価値観や方向づけなどが必要となります。これが新しい時代の一つの組織形態ということになります。足りないものは、連携によって調達する時代です。チャンスがあれば、中小企業でも取りうる手段です。機会を探りたいものです。
佐藤 等(ドラッカー学会理事)